ワインレッドの親心

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ワインレッドの親心

 2021年の幕開けです。今年もよろしくお願いします。  年末から雪が降る予報でした。  本日、3日です。我が家の辺りは、15cm程の積雪です。昨日、実家から弟がお年玉を持って来てくれたので聞いてみたところ、5~60cm積もっているようです。  はい。今年のお正月は、実家には帰りませんでした。 「正月は、雪が積もるらしいで寒いし、来んときねの」  暮れに、母から電話がありました。  何だ、会えないのかと、少し淋しく思っていると、父母の方から我が家にやってきました。母が漬けた干し大根のべったら漬けを桶ごと軽トラックに載せて持って来てくれたのです。いつもはさっさと帰ってしまう父も、その日は母が同行していたので、上がっていきました。 「コロナで帰省は控えてくれと言うてますんで、するなっていうことはしたらあきませんので」  父は、義母にそう話していました。真面目な父の考えそうなことです。  早々と、お年玉もいただきました。  その2日後に、父が四角い包みを持って来ました。父が腰のリハビリで通う病院の道筋にある、贈答品店の包みです。そこには妹の友だちが勤めているので、父はひいきにしています。そういうところも律儀なのです。  何だろうと思うと、「ワインや」と言います。父は夫によく日本酒をくれます。これも夫に、お歳暮として持って来てくれたのかと思いきや、「これは、あんたに。飲むやろ?」とのこと。前に私がアルコールパッチテストを受けて、お酒が飲めないことを言ったはずなのに、忘れているようです。 「何で私に?」 「前に小説で賞をもらったのに、何の祝いもしてえんかったで。また小説、がんばんねんへの」  そんなことを言われて、突き返せるわけがありません。 「ああ、ありがとう」 「ボルドーの金賞のワインらしいでの」  父は、ほくほく笑って、帰っていきました。  開けてみると、確かにそう書いてあります。父はワインそのものより、そのラベルに惹かれて、買ったのかもしれません。ぜひとも「金賞」に、あやかりたいものです。  私はそのワインを飾っておくことにしました。 「ママ、これいつ飲むのん?」 「それは……あー、ママが受賞した時」 「えー、でもママは、ワイン飲めないやん」  そうなのです。私はお酒の中でも、特にワインがダメなのです。 「なめるくらいなら、大丈夫やろ。これはお父ちゃんの気持ちやし」  ワインが熟成するほど、先のことにはならないようにしたいです。  父に、ワインを飲んだ報告もしたいですし。  今年こそ、飛躍の年にしたいです。いや、します。  あーあ。言い切ってしまったあ。  有言実行あるのみ、です。  
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