あかつき、九死に一生を得る

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あかつき、九死に一生を得る

 私は、今日も今日とて、自転車に乗って出かけていた。  10月になったが暑い。やはり上着などいらなかった。  それに、マスクが暑い原因だ。  外で自転車に乗っている時には、してなくていいのではないか?  マスクを外して、ぷはーっと息をつく。  すると風にあおられて、後ろに飛んでいく。あちゃー。  一瞬、戻るのが嫌になって、投げやりになる。 「ああ、もういいや」  そのまま行こうかという気が頭をよぎる。  いやいや、自分の手作りマスクなのに、何を面倒くさがってるの。  Uターンして、マスクを拾う。  少し行くと、行く手のアスファルトにボタボタと水っぽいものが落ちてくる。  目線を上げると、電線に止まったカラスがいるではないか!  あれは、フンだったのか!  マスクのことが無ければ、私は2分程早くその下を通り、直撃を食らったはず。  おお! 危ない危ない。  先日はこんなことがあった。  キッチンの棚にある物を取りたくて、ダイニングの椅子に乗った。  それが、取ったとたん、勢い余って後ろに落ちてしまった。  私はかなりの粗忽者なので、こういうことは日常茶飯事だ。  その時も落ちながら、あああ、またやっちまったよーと、のん気に構えていた。  そして、床にお尻を強かに打ちつけた。  イッテエと思いながら、立ち上がる。  いつもはお尻の肉をにくにくしく思っているのだが、どうやら今回はそれがクッションになった模様。  これが細い頃の私だったら、尾てい骨の骨折、悪くすれば背骨や頸椎、骨盤損傷して神経をやられ、下半身まひになっていたかもしれない。  それに、よく状況を見てみれば、私がひっくり返った場所は、ダイニングテーブルと食器棚の間の1mあるかないかのところだ。  これが、ほんの少しでもずれていたら、テーブルに後頭部をぶつけていたに違いない。  ひょえ~! 危ない危ない。  私は身体能力が高いのではない。  そもそも運動神経が発達していたら、マスクは飛んでいく前にキャッチし、椅子から落ちることもないのだ。  どうも、私は見えない何かに守られているように感じる。  またまたあ。  あかつき、また、うさん臭いことを言い出したぞと、お思いだろうか。  いや、ほんとに今までに何度もあるのだ。  道を渡っていて、車の陰からもう一台の車が現れて、轢かれそうになったことがある。私は赤信号では渡らない。横断歩道でないところでも渡らない。どんくさいのが違反したら大変なことになるのが予想できるからだ。  車を運転しないのも、然りだ。自損事故だけならまだしも、他人様を巻き込んだりしたら、目も当てられない。    自分でよく思う。よくぞこの歳まで生きて来れたものだと。  私が危険をすり抜けているのは、きっと守護神が、いつも見守ってくれているのだ。目に余るトロさなので、いつでも手を差し伸べられるように、ハラハラしながら見ていることだろう。  もうちょっとしっかりしなければ、と思いつつ、きっとずっとこんな感じなのだろうな、と諦めの域に達している。  もう少し落ち着きが出てきてもいい年齢だが、まあこのままでもいいかと思わないでもない。  何せ、道草で報告するネタが無くなるではないか!  いや、無事あっての物種だと思うのだが、如何に。
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