知らざあ言って聞かせやしょう

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知らざあ言って聞かせやしょう

NHKのEテレの子ども番組に、「にほんごであそぼ」という番組がある。 そこで取り上げられるのは、「日本語」だ。 それは歌舞伎の口上だったり、詩の一節だったり、俳句だったり、四字熟語だったりする。 始まった時は、こんなのちっちゃい子がわかるの? と冷ややかに見ていた。 否。侮るなかれ、幼な子のちから! 野村萬斎が「ややこしや〜、ややこしや」と狂言の真似事をする。うちの子たちは、嬉々として、それを真似ていた。 宮澤賢治の「雨ニモマケズ」もすらすら暗誦する。論語とも百人一首とも知らずに、口から飛び出す。毎日その番組をおもしろがって見ていた。 その後ろで、私も門前の小僧となり、いっしょに、いや子ども以上に楽しんでいた。 フラッシュカードのように、言葉がシャワーになって、テレビからあふれてくる。 子どもたちは、何の意味があるのかわからないまま、頭の奥底に種まきされている。 大きくなって、それを系統だてて学ぶ時、思い出すことだろう。 「これ、どこかで聞いたぞ」 ほとんど、刷り込みである。長期計画だ。 その番組を監修しているのは、教育学者の齋藤孝氏だ。 私の今の職場である図書室に、齋藤孝・編の絵本「知らざあ言って聞かせやしょう」がある。 テレビと同じコンセプトで作られているに違いない。 これは、歌舞伎「白浪五人男」の口上を絵本にしたものだ。盗っ人猛々しく、今までの悪事をベラベラ言い立てて、自己紹介する。 これを声に出して読んでみると、実にスカッとする。最後の「弁天小僧菊之助たぁ、俺がことだ!」と見得を切るのを知っている。多分、これも番組でやっていたのだろう。 さて、この口上をもじって、あるサークルに入った際、挨拶をした事がある。 それを私の自己紹介としたい。 知らざあ言って聞かせやしょう。 道元禅師ゆかりの村に生を発し、 水羊羹を食して、幾星霜(いくせいそう)。 渡る生業(なりわい)、数知れず 。 その度、技を手に入れる。 惚れた男も、数知れず。 流した涙は、大河成す。 転んでもタダでは起きぬと息巻いて、 ペンを刀にいざ見参。 横入り得意、話題の分捕り大得意。 毒舌、KYの問題児、あかつき草子たぁ 俺がことだあ! お粗末様です。 以後よろしゅう、あ、お見知り置きを!
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