シンデレラの選択

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シンデレラの選択

 ここ何年も、雨の日に何を履こうか迷ってきた。  長靴よりも軽い靴が欲しかった。  先日、神戸に行く機会があった。  一日、自由に歩き回った。  今思えば、開放感で気も大きくなっていたのだ。  海岸通りのおしゃれな店に入ってみた。  棚にあるスニーカーが目に入った。  底から5㎝ほどがゴムで、上部は布製だ。  くるぶしまである。  これなら、雨の日でもだいじょうぶだろう。  けれど、値段を見て、手が引っ込んだ。  今履いている靴が、優に3足は買えてしまう。  ぐるりと店内を回る。  頭の中で『このまま、外に出よう』と声がする。『高いって!』  それなのに、私は戻っていた。『履いたら欲しくなるよ』  そこへ店員から声が掛かる。 「履いてみませんか?」  何と魅惑的な響きだろう。  数秒後には、右足を差し入れていた。    白いスニーカーを試してみる。  爽やかな印象だが、汚れが目立つだろうか。 「茶色にします」   え?! 『します』って、買うの? と驚いていた。  帰って息子に、これは衝動買いかなと聞いてみた。 「ずっと欲しかったんなら、違うんじゃない?」  ま、いいか。  雨の日が楽しみになったし。そう納得した。  人生は、選択の連続だ。  時には直感を信じると、意外な未来につながるかもしれない。 
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