一の目:木下汐里①

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私は高校生の頃、地元の国立大学であるK大学の理学部を目指していた。 昔から勉強は頑張ってきたし、ある程度の学力もあったため、漠然とK大学に進学するものだと考えていた。 それに、昔から理科が好きだったため、理学部に進学することも私の中では決定事項だった。 しかし、成績は思ったように上がらず、センター試験では爆死し、K大学を受験することもなかった。 浪人も考えたが、1年後に合格する自分の姿を想像することができず、結局滑り止めの私立大学農学部に進学した。 そして、大学に進学して気づいたのだ。 私はK大学の理学部に進学したとして、いったい何を学びたかったのだろうか、将来どうなりたかったのだろうか、と。 結局私はK大学というブランドに憧れていただけなのだとはっきり気づいてしまった。 私には目標がない。今は時期としては就活真っ只中なのだけど、私は周りに流されるまま大学院進学を考えている。 大学院に進学してどうするのだろうか。ただ金が無駄なだけじゃないか。自分は本当に馬鹿だなと思う。 自分の将来が見えない。 子どもの頃に思い描いていた、キラキラした未来が見えない。
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