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「おいおいおい、ほんと買ったばかりだぞこれ! どこに消えたんだ」
そう言いながら立ち上がろうとした瞬間、ドン! という音と共に後頭部に激痛が走る。
その衝撃に、高藤は持ち上げた膝を再び絨毯の上につけた。真上では。頭突きを食らったデスクがぐらりと揺らぐ。
「いったー……クソ、ふざけるな……よ?」
頭をさすっていた高藤の手が止まる。デジャヴにも似た奇妙な感覚。そんな感覚が高藤の胸の奥に引っかかる。
「まさかな……」
先ほどとは違う恐怖が、高藤の頭をよぎる。消えた三時。意味不明だった二宮の話し、そして繰り返す町田の電話……。
そんなことはありえない、と自分の心を落ち着かせようとするも、それは別の感情によってすぐにかき消されてしまう。
直後、背中にヒヤリとした感覚を覚えた高藤は、ゆっくりと顔を上げて誰もいない事務所の壁に掛けられた時計を見た。
そこには、止まることなく動き続ける秒針と、そこだけ時間が逃げてしまったかのように空白になった2と4の間。そして……
二時五十九分。
その時刻を見た瞬間、思わず高藤は息を止めた。おかしい。こんなことがあるはずがない。
ありえない光景に、高藤は口を半開きにしたまま呆然と立ち尽くした。
「バカな……俺は認めないぞ……認めないぞこんなこと!」
部下の寝ぼけた話しが、今まさに腑に落ちようとしている。ありえない状況に、高藤の額からじわりと汗が流れ落ちる。
その時、コンコンコンと誰かが自分の部屋の扉をノックする音が響いた。
「誰だ!」と追い詰められた獲物がごとく叫び声をあげると、カチャリと静かにドアが開いた。
そこに現れたのは、もう一人の部下、二宮麗奈の姿だった。
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