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わたしの部下はバカばかり
「誰だ!」と野獣がごとく叫び声をあげると、カチャリと静かにドアが開く。
そこに現れたのは、もう一人の部下、二宮麗奈だった。
艶やかな黒髪、くっきりとした二重にすっと通った鼻筋。洗練されたその輪郭をさらに引き立てるかのような知的な赤い眼鏡。
まさしく『美しい』という言葉がぴったりと似合う女性なのだが、一つ残念なことがあるとすれば、こいつも町田とどっこいどっこいのバカだということ。
「おい二宮! お前今日外回りだろ? 営業はどうした?」
荒れる呼吸を無理やり抑えながら、高藤は目の前の人物をぎゅっと睨んだ。すると相手は詫びる様子もなくニコリと笑う。
「もう部長ったら、何度目ですかこのやり取り」
二宮が大人の色気をたっぷりと塗った唇で優雅に弧を描いた。そしてその分だけ上司は口端をへの字に曲げる。
わけのわからないことを言う奴が一人いるだけで頭が痛いのに、ここにきてもう一人増えやがった。
高藤は叫びそうになる衝動を必死に堪え、眉毛をピクピクと動かしながら、黙ったまま目の前の相手を睨み続ける。
「それより部長、大変なことになりましたね」
はあ、とため息をつくと二宮は右手を頬に当てて悩ましげな表情を作った。それを見て、「何だ?」と高藤が声を低めて尋ねる。
「何だって……部長、時計見てないんですか?」
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