わたしの部下はバカばかり

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 どこから出してきたのか、奇想天外なことをしでかす部下の左手には、いつの間にか封の開けられたジャンクフードが握りられている。 『新登場!』とデカデカと記されたその袋からは、腹立たしいほどのバター醤油の匂いが漂ってくる。 「部長、こういう事態の時に一番大切なのは『冷静さ』です」  むしゃり、とチップスを歯で砕きながら二宮が言った。 「おそらく私が思うに、これは単純に『三時が消えた』というだけではないと思うんです。もっと別の……大切な何かを見落としていると考えられませんか?」  非常に真面目なことを言いながら、上司のデスクに腰掛けてポテトチップスを食っている部下。  見落としてるとも。ああ、見落としてるとも。お前自身が人として大切なことを見失ってるということをな。  これ以上らちがあかない。そう思った高藤は勢いよく立ち上がると、目の前の相手に人差し指を向けて叫んだ。 「いい加減にしろ! お前もこんなところで油売ってないで、はやく外回りの営業に行ってこい! 今すぐ行け、今すぐだ!」 ダン! と力強く力強くデスクを叩く高藤に、「仕方ないわね」と二宮は小さくため息をつく。 「部長、指示の出し方がスマートじゃありませんわ。部下への指示と物事の去り際はお上品でないと」  そう言って二宮はよっこらしょと立ち上がる。彼女が座っていたところには、散らばるチップスの残骸。……これのどこがお上品なのだ?  激しい頭痛も感じ始めた高藤は、再び椅子に腰を下ろすと頭を抱えた。そんな彼に向かって、「部長」と二宮が呼びかける。
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