第二章 輪廻の種子・麗しの舞姫

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「なっ、なにをするか小童。ワシはこれからアイーダとっ」 「黙れよ色ボケ国王が‼彼女が嫌がってんの、分からないのか? アンタの目は節穴かよ」  喚く国王に臆することなく若者は刃向った。 「ぐぬぬ・・・・・。小童が無礼にもほどがあるぞっ‼おまえのところは金山の取引に来たんだったな。だったらおまえと取引せぬようヘサーム王に進言するまでじゃ」 「そんなっ」  アイーダは思わず声を上げる。  権力に物を言わせた脅迫なんて卑怯だ。 「アイーダ。おまえがワシと床入りするなら万事うまくいくのじゃぞぉ」  ジャービル王は身を乗り出し、若者の後ろに隠れるアイーダを覗き込んだ。 「・・・・・・っ」  アイーダは王と目を合わせないように盾の背後で縮こまった。 「ジャービルさまー‼」 「なんじゃい! 騒々しいっ」 「ヘサーム陛下が御呼びです」 「くそっ! 覚えておれ小童」  ジャービル王は苦虫を噛み潰したような顔で若者を見ると、呼びに来た側近を連れて、その場を離れて行った。  ジャービル王の姿が見えなくなり、ようやくアイーダは生理的な不快感を伴う緊張から解放される。 「はぁっ、ありがとうございます。ルトさん」 「いいよ。気にしないでアイーダ。ごめんね。もっと早く来られれば良かったんだけど兄さんと交渉の件で打ち合わせてて。あ、アイーダも舞台袖で待っててくれてもいいんだよ。その方が最初から僕が守ってあげられるしさ」 「仕事で逗留している方に、毎回甘えるわけには・・・・・・」 「他人行儀だなぁ、僕ら知り合って一ヶ月経つだろ?ただの友人だけどさ」  ルトは気さくに笑った。  垂れ目で子犬のように人懐こい青年は同じくらいの目線の高さだ。  彼は舞台終わりのアイーダをいつも宿泊部屋まで送り届けてくれるのである。 「いえっ・・・・・・。いつもありがたいと思っています」 「そういうのが良い所だって思うけどさ。本当なら、君はひとりで王宮内を歩かないほうがいいんだけど。そうも言ってられないよね」  ルトの言う通りなのでアイーダは苦笑いするしかない。  踊り子仲間といっしょに部屋まで来ればいいのだが、舞台後部屋に直接戻る者はアイーダ以外誰ひとりいなかった。
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