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「きみは一度死んだんだよ。みつ子」
「えっ?」
唯一、正しい自分の名前を呼ぶ声に、みつ子は懐かしさにも似た安堵を感じる。
その舌足らずな声のほうを見て、みつ子は目を見開いた。
「ねっ・・・・・・ネコ? いや、蝙蝠・・・・・え、鳥?」
みつ子の眼前には、子猫くらいの大きさの生き物が宙に浮いている。
顔は明らかに猫だ。
全身真っ黒で、背中に蝙蝠の羽根とカラスみたいな羽根を生やし、よく猫動画に出てくる、おじさん座りをしている。
「アイーダ~ぁ。まぁああだ夢見てんのぉおおおおおおっ?」
「ひだだだだだだ‼ひだいっ‼」
おかっぱ頭の女子に頬っぺたを引っ張られた。
摘まれた一点がぎりぎりと痛い。
つまり―――。
(夢じゃない・・・・・・?)
「だ、だって、こんな変な生き物ッ‼」
みつ子は、そのわけの分からない顔だけ猫の生き物をがっちり両手で掴んで、お団子頭女子の目の前に突き出す。
「ハァッ? 何もいないでしょッ‼」
「で、でもここにっ」
「ココにって、アンタの両手があるだけでしょッ‼」
だが、しらっとした顔で言い返されてしまった。
「残念。オイラ、みつ子以外には見えないし、声も聞こえないんだよ」
「え?」
顔だけ猫生のき物の言葉に、みつ子は手の力が抜ける。
その生き物は、ひゅっと、みつ子の手から抜けると、どすんっと彼女の頭に乗っかってきた。
「ここは今まで君が居た次元とは違う次元。まったく繋がってはいない場所」
「違う次元って」
みつ子が周りを見渡すと、他にも大勢の女性、そして楽器を手にした数人の男性がいた。
女性は全員ベリーダンスのような恰好をしているが、ずいぶんと露出が多い。
上半身は、ビキニみたいな形で下半身はハーレムパンツかスカートーーではあるものの、大部分が透けていて、ほぼマイクロビキニ状態だ。
同性とはいえ目のやり場に困る。
(男性もいるのに平気なのかな?)
みつ子の心配をよそに男性たちは、てんでに過ごしている。
女性たちとは対照的に彼らはターバンを巻いて、ゆったりした胴衣を着ていた。
夢ではないにしても非現実的だ。
とりあえず日本ではないようである。
と、そこまで目に入った時点で、みつ子の目に信じられない光景が飛び込んできた。
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