第二章 輪廻の種子・麗しの舞姫

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「きみは一度死んだんだよ。みつ子」 「えっ?」  唯一、正しい自分の名前を呼ぶ声に、みつ子は懐かしさにも似た安堵を感じる。  その舌足らずな声のほうを見て、みつ子は目を見開いた。 「ねっ・・・・・・ネコ? いや、蝙蝠(こうもり)・・・・・え、鳥?」    みつ子の眼前には、子猫くらいの大きさの生き物が宙に浮いている。  顔は明らかに猫だ。  全身真っ黒で、背中に蝙蝠の羽根とカラスみたいな羽根を生やし、よく猫動画に出てくる、おじさん座りをしている。 「アイーダ~ぁ。まぁああだ夢見てんのぉおおおおおおっ?」 「ひだだだだだだ‼ひだいっ‼」  おかっぱ頭の女子に頬っぺたを引っ張られた。  摘まれた一点がぎりぎりと痛い。  つまり―――。 (夢じゃない・・・・・・?) 「だ、だって、こんな変な生き物ッ‼」  みつ子は、そのわけの分からない顔だけ猫の生き物をがっちり両手で掴んで、お団子頭女子の目の前に突き出す。 「ハァッ? 何もいないでしょッ‼」 「で、でもここにっ」   「ココにって、アンタの両手があるだけでしょッ‼」  だが、しらっとした顔で言い返されてしまった。 「残念。オイラ、みつ子以外には見えないし、声も聞こえないんだよ」 「え?」  顔だけ猫生のき物の言葉に、みつ子は手の力が抜ける。  その生き物は、ひゅっと、みつ子の手から抜けると、どすんっと彼女の頭に乗っかってきた。 「ここは今まで君が居た次元とは違う次元。まったく繋がってはいない場所」 「違う次元って」  みつ子が周りを見渡すと、他にも大勢の女性、そして楽器を手にした数人の男性がいた。  女性は全員ベリーダンスのような恰好をしているが、ずいぶんと露出が多い。   上半身は、ビキニみたいな形で下半身はハーレムパンツかスカートーーではあるものの、大部分が透けていて、ほぼマイクロビキニ状態だ。  同性とはいえ目のやり場に困る。 (男性もいるのに平気なのかな?)  みつ子の心配をよそに男性たちは、てんでに過ごしている。   女性たちとは対照的に彼らはターバンを巻いて、ゆったりした胴衣を着ていた。  夢ではないにしても非現実的だ。  とりあえず日本ではないようである。  と、そこまで目に入った時点で、みつ子の目に信じられない光景が飛び込んできた。
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