第二章 輪廻の種子・麗しの舞姫

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 アイ-ダは寝台から起き上がり、箪笥から寝間着を出し、ポンチョを脱いだ。  部屋の隅にある姿見が、彼女の全身を映し出す。  赤と紫を基調とした踊り子の衣装は情熱的な炎のようである。  大広間にいた女たちよりは肌の隠れる面積は多いものの、上下ふたつに分かれた作りは同じ。  ブラ状の上衣が西瓜のように膨よかで形の良い胸を包み、腹と背中が大きく露出され、なめらかな曲線を描く細い腰回りを強調する。  腰から下は片側に大きい裂け目の入ったスカートが桃の様に丸い尻、程よく肉のついた大腿から、すらりと伸びた脚をなぞった。  アイーダは視線を下に落とす。  みつ子だった頃に、この今の容姿だったらどんなに良かったか。  あの、きゃらきゃらした声に攻撃されることもなかっただろう。    逆に鈴木みつ子(前の自分)と取り換えたいくらいだ。  みつ子の容姿なら、誰も鼻も引っかけないし、ヘサームにだって睨まれなくて済む。  毎晩感じる、あの鮮紅色(ルビー)深青色(サファイア)の射貫くような瞳―――。  青絹で覆われた顔は表情が分からない分不気味で恐ろしい。  ぞくり、としてアイーダは(カラダ)を掻き抱いた。
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