第三章 剥き出しに 芽吹き 果肉は柔い ☆

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「えっ・・・・・・?」  ヘサームの広い肩越しに、精密な彫刻の天井が覗く。  アイーダの体は砂利塗れの床に倒されていた。  一瞬のことでアイーダは気づくのに数秒かかった。  長い毛先が顔の横に落ちていて、アイーダは、ナイフ投げの的になった気分に陥る。   状況に頭が追いつかない。  逃げろ――  と、本能が警告する。  危機感はあるのに、どろりとした飢えのようなものがアイーダの体中に広がっていた。   風邪で高熱に浮かされているみたいに体の熱が上がっていく。 「ひゃあっ‼ や ぁ・・・・・・」  黒いポンチョを胸の上まで捲られ、隠された白い肌を暴かれた。  乾いた冷たさがアイーダの体温を攫っていく。  檸檬(れもん)色の上衣を覆う双丘は、中心がツンと持ち上がっていた。  一欠けらの躊躇(ちゅうちょ)も見せず、ヘサームは、その中に手を滑り込ませる。 「はっ・・・・・・あぁっ」   直に胸を触られアイーダは身悶えた。   零れ落ちそうな程、豊満な乳房に褐色の長い指が食い込んでいく。  ヘサームの手をどかそうとしても、指先すら、うまく動かせない。  「やっいやっ・・・・・・。やめてっアァッ―――‼」  容赦なく乳房を揉みしだかれ、アイーダは悲鳴を上げた。  目を瞑り、胸に刻み込まれる感触から逃げようとしていた。 「こんなに尖らせておいて、どの口がほざく」 「あぁっやっ、いやぁ‼」  胸の先端をぎゅっと摘まれ、じりっとした痛みが走る。 「ンッ、あっああっ」  だが、その中に微かな快感をアイーダは感じ取った。  疼きが胸全体に広がり、下半身にも染み込んでいく。 (やだっ・・・・・・。気持ちいいなんて思っていない!)  アイーダはぎりっと奥歯を噛んで声を押し殺した。   彼女は自分自身の体の反応を全力で否定する。  この世界の淫乱な女たちと同じになりたくなかったのだ。   頑ななアイーダを嘲笑うかのように、ヘサーム王は両方の乳房を掬い《すく》上げた。 「あっ、やぁっ! いやあああっ」  西瓜と見紛う乳房が晒される。  まろやかな真珠色と、桑の実色の乳首。  乱れる呼吸で上下する様が卑猥さに拍車をかけていた。   「あぅっ・・・・・・あっああっ」   胸を隠すまもなく、アイーダは、ヘサームに、ふたたび胸を弄ばれる。   右胸は同じように揉みしだかれながら乳首を弄られ、左胸は乳首吸われながら揉み上げられた。 「いやっ・・・・・・いやぁっ! いやああああっ。あうっあっ・・・・・・ああっ」  じりじりした痛いような刺激と、熱く柔らかい舌で嬲られる刺激。 (やだっ。触らないで、そんなふうに揉まないでっ・・・・・・吸わないでっ・・・・・・)  見て見ぬふりをしようとしても、くり返される責め苦に気づかざるを得なくなる。  今触られている部分が自分の感じる場所――性感帯なのだと。 (やめてぇ・・・・・・っ)  その願いが通じたのか、僅かに刺激される位置が変わった。  「んっあっ・・・・・・。あああああッ!」  しかし、それはほんの一瞬で、ヘサームの手は元の位置に戻ったのだ。 「ああっ! あっあっあっあっ・・・・・・。やぁっいやあああああ」  悲鳴を上げる度に刺激は強くなっていく。  アイーダは自分が感じる場所を執拗に攻められるのを感じた。  (わたしが声を上げる部分を選んでいるの?)  うっすらと開けた目に映ったのは欲情を滲ませた雄の顔だった。   しかし、なぜだか、そのぎらつく色の異なる瞳に対して不快感はない。  キスをされた時みたいに、ぞくぞくした感覚が背筋を這い上がった。  それは単に野獣に囚われた草食動物としての感情なのか。  強引に体を触られて嫌なのに。  嫌なはずなのに。  
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