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「えっ・・・・・・?」
ヘサームの広い肩越しに、精密な彫刻の天井が覗く。
アイーダの体は砂利塗れの床に倒されていた。
一瞬のことでアイーダは気づくのに数秒かかった。
長い毛先が顔の横に落ちていて、アイーダは、ナイフ投げの的になった気分に陥る。
状況に頭が追いつかない。
逃げろ――
と、本能が警告する。
危機感はあるのに、どろりとした飢えのようなものがアイーダの体中に広がっていた。
風邪で高熱に浮かされているみたいに体の熱が上がっていく。
「ひゃあっ‼ や ぁ・・・・・・」
黒いポンチョを胸の上まで捲られ、隠された白い肌を暴かれた。
乾いた冷たさがアイーダの体温を攫っていく。
檸檬色の上衣を覆う双丘は、中心がツンと持ち上がっていた。
一欠けらの躊躇も見せず、ヘサームは、その中に手を滑り込ませる。
「はっ・・・・・・あぁっ」
直に胸を触られアイーダは身悶えた。
零れ落ちそうな程、豊満な乳房に褐色の長い指が食い込んでいく。
ヘサームの手をどかそうとしても、指先すら、うまく動かせない。
「やっいやっ・・・・・・。やめてっアァッ―――‼」
容赦なく乳房を揉みしだかれ、アイーダは悲鳴を上げた。
目を瞑り、胸に刻み込まれる感触から逃げようとしていた。
「こんなに尖らせておいて、どの口がほざく」
「あぁっやっ、いやぁ‼」
胸の先端をぎゅっと摘まれ、じりっとした痛みが走る。
「ンッ、あっああっ」
だが、その中に微かな快感をアイーダは感じ取った。
疼きが胸全体に広がり、下半身にも染み込んでいく。
(やだっ・・・・・・。気持ちいいなんて思っていない!)
アイーダはぎりっと奥歯を噛んで声を押し殺した。
彼女は自分自身の体の反応を全力で否定する。
この世界の淫乱な女たちと同じになりたくなかったのだ。
頑ななアイーダを嘲笑うかのように、ヘサーム王は両方の乳房を掬い《すく》上げた。
「あっ、やぁっ! いやあああっ」
西瓜と見紛う乳房が晒される。
まろやかな真珠色と、桑の実色の乳首。
乱れる呼吸で上下する様が卑猥さに拍車をかけていた。
「あぅっ・・・・・・あっああっ」
胸を隠すまもなく、アイーダは、ヘサームに、ふたたび胸を弄ばれる。
右胸は同じように揉みしだかれながら乳首を弄られ、左胸は乳首吸われながら揉み上げられた。
「いやっ・・・・・・いやぁっ! いやああああっ。あうっあっ・・・・・・ああっ」
じりじりした痛いような刺激と、熱く柔らかい舌で嬲られる刺激。
(やだっ。触らないで、そんなふうに揉まないでっ・・・・・・吸わないでっ・・・・・・)
見て見ぬふりをしようとしても、くり返される責め苦に気づかざるを得なくなる。
今触られている部分が自分の感じる場所――性感帯なのだと。
(やめてぇ・・・・・・っ)
その願いが通じたのか、僅かに刺激される位置が変わった。
「んっあっ・・・・・・。あああああッ!」
しかし、それはほんの一瞬で、ヘサームの手は元の位置に戻ったのだ。
「ああっ! あっあっあっあっ・・・・・・。やぁっいやあああああ」
悲鳴を上げる度に刺激は強くなっていく。
アイーダは自分が感じる場所を執拗に攻められるのを感じた。
(わたしが声を上げる部分を選んでいるの?)
うっすらと開けた目に映ったのは欲情を滲ませた雄の顔だった。
しかし、なぜだか、そのぎらつく色の異なる瞳に対して不快感はない。
キスをされた時みたいに、ぞくぞくした感覚が背筋を這い上がった。
それは単に野獣に囚われた草食動物としての感情なのか。
強引に体を触られて嫌なのに。
嫌なはずなのに。
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