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「ふぅ・・・・・・ッ」
（やっ・・・・・・やだ・・・・・・っ、もぅ やめてぇ・・・・・・っ）
夜の砂漠の空気が肌を刺すのに、体の奥底は熱砂みたいに熱い。
深い部分で何かが、ずくりと疼く。
自覚はなくともアイーダの中の雌は確実に目覚め始めていた。
「ァッ・・・・・・」
大きな掌が細い腰を撫で回す。
ヘサームは腰に着けた鎖飾りと肌の間に指を入れる。
指先で鎖を浮かすと、シャラシャラと小さい金属音を鳴らしながら、まだ男を知らない踊り子の肌を弄んだ。
「いやぁ・・・・・・ッ！」
くすぐったさにアイーダは身を捩る。
思わせぶりな指で触れられた所から熱を灯して溶けてしまいそうだ。
（やだ・・・・・・。変な感じがする）
嫌なのに、怖いのに、なんだかもどかしい。
だんだんと疼く何かが意識の水面に浮上してくる。
「どうした？ 一刻も早く樹から落ちたいのか？」
「ちっ、ちがっ・・・・・・―――アアアッ‼」
挑発する声に否定を口にすれば脚の間に何かが挿し入れられた。
下穿きの隙間から侵入した長い指が、ぐちゅうっと誰にも触れられたことのない赤い秘肉を掻き分けていく。
「ふぁああああああ‼やッ、いやぁああああ‼いやぁああッ」
アイーダは目を見開き、こじ開けられる痛みに仰け反った。
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ。
「あっ、アァッ、あぁッあッアアァッ」
幾幾も膣窟を弄って来た指は、守りの蜜液を絡めとりながら、内壁を抉って更に蜜を出させる。
溢れた純潔の蜜が太腿を伝う。
「纏っている意味はないな」
ヘサームは指を引き抜き、下穿きの両脇を摘み、下へ降ろした。
「やっやだっ・・・・・・やめてっ、やめてぇっ・・・・・・‼」
アイーダは必死で喉から声を絞り出して叫ぶが、ヘサームには欲情を掻き立てるエッセンスでしかない。
膝裏を持ち上げられ、膝頭が高くなる。
脚を動かそうとするが、太腿から爪先まで痙攣して思うようにならない。
蜜で、ぐしょぐしょに濡れたせいで、張りついたり、引っかかったりしながら、下穿きが膝頭に向かって登っていく。
頂角を過ぎると、するりと抜けていく。純潔を守る薄布はあっけなく役目を終えた。
「他の奴らは誰がお前をモノにするか、賭けていたな」
「知って、て・・・・・・っ、アアァッ‼」
一部真偽が不明なルトの言っていたことは本当だった。
他の貴族たちがアイーダをモノにすることを賭けているのを、ヘサーム自身も承知の上だとは。
宴の目玉として呼びつけたくせに、何かあっても自己責任ということらしい。
一国の主ならば、自国内で起きること、せめて自分の居住地内で起きていることには目を配ってもらいたい。
「未熟な果実を食すのも、一興だな」
「やだっおねがい、や、めてやめてぇ‼」
ヘサームは猛り立った自身を取り出す。
処女のアイーダにとって、それはとても恐ろしく、おどろおどろしいものだった。
「舞う間はお前の引き立てになるが今は邪魔だ」
ビリビリとスカートが腰の鎖飾りごと引き裂かれる。
「いやぁああああああ‼」
何も隠すものがなくなり、必死で膝を着けて膣を庇う。
だが、膝頭がくっついていたのは、ほんの一瞬で即座にヘサームの手で二つに分かれてしまった。
「無意味なことを」
カシャリ、と音がするほうを見ると、ヘサームの手に部屋の鍵が付いたベルトがあった。
「やっ・・・・・・返してっ」
「この後でな」
残酷な物言いに、アイーダはカアアアアと顔と体が羞恥で熱くなる。目を合わすまいと、ヘサームから顔を逸らす。
「ひゃうんッ」
アイーダは不意に体の中心に違和感を感じた。
烏羽玉の頭が自分の股にある。ねっとりとした熱い感触が膣口を突いた。
「あッ・・・・・・ああぁ‼いやぁあああああっ・・・・・・。あぅっ、はっはっやぁッ・・・・・・。んんぅ、はっぁ・・・・・・」
ねちゃり、ねちゃりと、唾液塗れの舌が蜜を舐めとっていく。
「うぅぁ・・・・・・っ、アアァっ」
（ど・・・・・・して、こんなっ・・・・・・。好きでもない男に）
「奥から奥から溢れてくるな」
「ち、がっ・・・・・・」
びくびくと震えるカラダ。どうしていいか分からない。
（ほしい）
―――でもナニを・・・・・・？
そんな疑問がはたと浮かぶ。
自分自身で思ったことなのに、アイーダは悪寒がした。
今まで考えたようとすらないことに。そんな自分の考えに恐ろしくなった。
その答えが一気に彼女の中心を貫いた。
「いやぁああああああああああああっ‼」
メリメリと、開ききらない蜜口が太い男根に破かれていく。
青くも、雌の本能に目覚めた秘窟は、雄を離すまいとギュウギュウと締め上げた。
ドクドクと脈打つ自身に、ヘサームが眉を顰める。
「キツイな・・・・・・。くくっ、宵の翠玉が生娘なのは、まことだったか」
彼は華奢な腰を掴み、さらに自らの欲を未開の蜜壺の底へと押し込んだ。
「はぅ、ぐ、あっ・・・、ぐ、ぁああああっ‼」
痛みに貫かれ、アイーダは弓なりに身を反らす。
軋む体の奥で、外からもたらされたものと繋がった気がした。カチリと欠けた部分に必要なものが、はまった気がした。
夜風に体温が奪われても、絶えず薪をくべる焚火のように、次から次へと与えられる律動にカラダの中心は熱くなっていく。
自由にならない軀。アイーダは激しい律動に翻弄され叫び続けた。
枝に縋りついていた果実は、簡単に捥がれてしまった。
「これで、先刻のことは忘れただろう」
ヘサームは悪びれた様子もなく、堂々と言い放った。
「―――・・・・・・っ」
（確かにルトのキスなんて忘れてたけれど。だからって―――。）
初めて果てたアイーダの体は、鉛のように重くなっていた。
極度の緊張と衝撃に耐えきれず、カラダがガクガクと震える。
唾液に満ちた口内と唇に残された感触。カラダの中心に残る熱の痕。
今あったことが現実だと追い打ちをかける。
「・・・・・・っ、ひ、どい・・・・・・ッ‼いくらおうさま、だ・・・・・・か、って」
ぼろぼろと大粒の涙が、翠色の瞳から溢れ出た。
「わ、たしな・・・・・・かっじゃなくても・・・・・・あ、なた・・・・・・ならっ・・・・・・相手なんかいっぱいっ」
しゃくりあげながら、声を上げて泣く目の前の女に、ヘサームは一瞬だけ目を見開いた。
しかし、すぐいつもの王たる貫禄の表情に戻ると、独り言のように言葉を発した。
「魔神。この踊り子を部屋まで送り届けてやれ」
否や黒煙が立ち上り、巨大な魔神が現れた。
先日遭遇した魔神と同じ様な風体だが、ある主の威厳を放っていた。
前者の魔神が轟轟と燃え盛る火であるなら、この魔神は嵐をも抱く底の見えぬ大海である。
だが、無理矢理、軀を捥がれたアイーダがその差に気付くことはなかった。
魔神は彼女を手に乗せるとすぐに消え去った。
「珍妙な小娘だ」
ヘサームの呟きは、月明かりに照らされる青い空間に吸い込まれた。
「ひえぇッ‼なっなんでおまえがぁああ‼」
アイーダの部屋の寝台で眠りこけていたムーニャが、ヤマアラシのように全身の毛を逆立てる。
魔神は、放心状態のアイーダをムーニャの横に置くと、すうっとその姿を消した。
「あ、アイーダっ・・・・・・みゃッ‼」
耳を下げたままムーニャがアイーダに近づくと、頭に大粒の雫が当たった。
ただ、口で呼吸する。
目から水滴を出す。
アイーダは生理反応をただくり返していた。
体自体は今ここに存在しているというのに、心はどこかに置いてきてしまったみたいだった。
最初、この世界に来たことを自覚した時の違和感と似ていて・・・・・・。
でも、右も左も分からなかった状態よりも、なまじ知り始めた世界だからこそ、その衝撃は激しかった。
数十分前のジブンとは違う感覚。
自分の膣に、ジブンのモノじゃないものが侵入してきた、蝕まれた異物感が気持ち悪い。
今まで感じたことすらなかった、本来、女ひとりなら永遠に埋まることのない欠けた空間を認識した。
それが埋まってしまった。生まれた頃の自分には、もう戻れないという事実だった。
ずっと大切に守ってきた秘密をこじ開けられ、壊された気分だ。
「にゃっ‼」
呆然としたまま、アイーダが重力に任せて寝台に倒れこんだ反動でムーニャが宙に跳ね上がった。
—ー疲れた。もう何も考えたくない。
落ちかける瞼の隙間には、紺色の冷たい室内が覗いている。
——本当に、すべて夢だったらいいのに。
一度完全に目を閉じて開いてみても、やっぱり見えるのは同じ景色だ。
しかも、この現実から逃げたくて目を瞑ったら、自分の中で響くのは、さっきの忌まわしい光景だった。
眠りたくない。眠りたくないのに。
心と身体を蝕む倦怠感は、アイーダを意識の底へと落とした。
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