第三章 剥き出しに 芽吹き 果肉は柔い ☆

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「‼」 (鍵がない)  そうだ。昨夜はルトの口車に乗せられ部屋には帰ってこなかった。  つまり舞台の前に部屋を出たきりで、南京錠は外からかけられている状態だ。  じゃあ、どうして自分は部屋の中にいるのか。 『終わったらな』  ヘサームの言葉がアイーダの脳内を蹂躙する―――。  昨夜の悪夢のような出来事が脳内で再生され、アイーダの意識にべっとりと、へばりついた。  あの生々しい、体の中で男の生殖器が暴れる感触。  それを咥えさせられた膣奥の筋肉が収縮した。 「――ッ」  太腿が痙攣し、膝が、がくりと崩れる。 (一生縁のないことだと思っていたのに)  ひと晩で、ふたりの男に唇を奪われるたことだって充分ショックなのに、信頼していた男には裏切られ、一番苦手な男には純潔まで奪われた。 (で、でもヘサーム王は、どんな女性とだって一夜限りだって言うし)  もう、一度襲った自分には、関わらない筈だ。  それだけはある意味救いかもしれない。  しかし、部屋から出られないとは。  床に、へたりこんだアイーダは変わりばえのしない木製の扉を見上げた。  なんだか(ヘサーム)の手中に落ちた気がする。 (閉じ込められたってこと?)  絶望感が体中の水を吸い取って、心が、からからになっていく。 (でも、あんな男たちの前で踊るよりはマシかもしれない)  鍵が手元にないのだから、舞台に出られなくても咎められることはない。  少しほっとして部屋の中を見回した。  すると窓が目に入り、周囲に助けを求めるという選択肢が顔を出す。  逆に部屋から出なくてもよいという選択肢が、なりを潜めた。  床に手を付き、アイーダは、ぐっ、と重たい身体を立ち上がらせる。  窓のほうへ一歩踏み出した瞬間、ずぼっと首の後ろの髪の毛に、もふもふしたモノが突っ込んできた。 「案の定、眠れなかったようだな」  麝香の香りが鼻をかすめる。  昨夜自分の体を奪った男が、ずかずかと部屋に入ってきていた。
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