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髪の毛の中で丸まっているムーニャの震えが振動して、自分の震えにもスイッチが入ってしまう。
刻み込まれた恐怖に怯えながらもアイーダは必死で、ヘサームを睨みつける。
しかし、ヘサームは不敵な表情で喉奥で笑っていた。
「化粧が台無しだ」
「~~~~~~ッッ」
(全部アンタのせいじゃない!)
アイーダは心の中でそう叫ぶ。
食卓を持った召使が、ふたりの横を通り過ぎる。
「特別に調合させた鎮静薬と、滋養のある料理だ」
「えっ?」
ヘサームの説明にアイーダは面食らった。
わざわざ大国の王が見舞いにでも来てくれたというのだろうか。
召使は床に絨毯を敷き、食卓を置いた。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
どぎまぎしつつ、形だけの礼を述べ、アイーダは絨毯に腰を下ろした。
食卓には料理の盛られた中皿と液体の入った杯、アネモネと紫のスミレが飾られている。
「くくっ・・・・・・。まこと容易く信用するな。媚薬が盛られているとは考えないのか?」
「びッ 媚薬っ!?」
アイーダが添えられたスプーンで料理を口にすると、ふたたび、ヘサームの笑い声が響いた。
ガチャンッとスプーンが食卓に落ちる。
(じゃあ、この薬も)
青ざめながら、アイーダは疑いの眼差しを料理と薬に向けた。
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