第三章 剥き出しに 芽吹き 果肉は柔い ☆

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「ぃだ・・・・・・。こ、みつ子ぉ‼」  ムーニャの目覚ましでアイーダは瞼を持ち上げる。 「僕にもご飯~‼」  理由は不明だが、なぜだかムーニャの一人称は、ぐちゃぐちゃだった。  “クロ“だった頃はオスなので、『ぼく、オレ』が正しいような気もする。  ぼーっとした頭のまま、アイーダは寝台で上半身を起こす。 「何十回も声掛けたのにぃ~」  けたたましいムーニャの声にも気がつかなかったということは、くやしいが、ヘサーム王の差し入れで、しっかり眠れたのだろう。  アイーダは部屋のカーテンを開け、空を見上げた。  太陽は昇りきっているけれど真上まではいっていない。  今から食堂へ向かえば、きっと練習にも間に合う。  幸か不幸か、仕事に穴を開けずに済むということに安堵する。  着替えようとふり向くと、枕元の鍵が目に入った。  さっき、ヘサームが置いて行ったようだ。 (言ったことは守るのね)  意外と律義なヘサームの一面に、アイーダの後悔した気持ちは、わずかながら薄れた。  ムーニャを伴い、アイーダは食堂へと向かう。  体は正常に動いているのに、なんだか昨日までの自分のものとは、ちがう気がして、ロボットのような、ぎこちない歩き方になってしまう。 (朝食時間に顔を出さなかったこと、なんて言えば)  都合の良い方便が浮かばず、アイーダは悶々としながら、食堂へと足を踏み入れた。
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