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「ぃだ・・・・・・。こ、みつ子ぉ‼」
ムーニャの目覚ましでアイーダは瞼を持ち上げる。
「僕にもご飯~‼」
理由は不明だが、なぜだかムーニャの一人称は、ぐちゃぐちゃだった。
“クロ“だった頃はオスなので、『ぼく、オレ』が正しいような気もする。
ぼーっとした頭のまま、アイーダは寝台で上半身を起こす。
「何十回も声掛けたのにぃ~」
けたたましいムーニャの声にも気がつかなかったということは、くやしいが、ヘサーム王の差し入れで、しっかり眠れたのだろう。
アイーダは部屋のカーテンを開け、空を見上げた。
太陽は昇りきっているけれど真上まではいっていない。
今から食堂へ向かえば、きっと練習にも間に合う。
幸か不幸か、仕事に穴を開けずに済むということに安堵する。
着替えようとふり向くと、枕元の鍵が目に入った。
さっき、ヘサームが置いて行ったようだ。
(言ったことは守るのね)
意外と律義なヘサームの一面に、アイーダの後悔した気持ちは、わずかながら薄れた。
ムーニャを伴い、アイーダは食堂へと向かう。
体は正常に動いているのに、なんだか昨日までの自分のものとは、ちがう気がして、ロボットのような、ぎこちない歩き方になってしまう。
(朝食時間に顔を出さなかったこと、なんて言えば)
都合の良い方便が浮かばず、アイーダは悶々としながら、食堂へと足を踏み入れた。
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