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透かし彫りの、連窓から入った光が、まろやかな美しさを引き立てている。
「おぉ~っ‼ザ・アラビアン・ナイトってカンジだねぇ」
もふっと、ムーニャがアイーダの頭に乗る。
「しかも、気持ちいいねぇ~、ふあ~、いい風~」
「うん」
宿泊部屋も涼しかったが、後宮は楽園のようだ。
王宮は、聖泉を囲むように建てられており、灼熱地獄の砂漠の直中にありながら、冷然の風が行き渡り、快適に過ごせた。
その中でも、特に後宮は快適な場所にあった。
昔読んだアラビアン・ナイトの王女が住んでいそうな部屋に、アイーダも一瞬心が躍ってしまった。
こんな状況の世界の一角でなければ、手放しに大喜びしただろう。
「必要な物がございましたら、お申しつけください」
一礼して女官たちは部屋を出て行った。
吹き抜け上の空間に扉の閉まる音が虚しく響いた。
ひとりで過ごすには広すぎる。
女のバトルに巻き込まれずにすんだのはよかったが、逆に落ち着かない。
「うわぁ~‼ゴージャスだねぇ~‼ふっかふか~‼」
早速ムーニャはベッドで、ぽぉんぽぉんとトランポリンをしている。
「ホラ、アイーダもぅ‼こんな高級ベッド、なかなかお目にかかれないよぅ‼」
はしゃぐムーニャの声に誘われて、アイーダはおずおずと寝台に近づいた。
腰を預けると、上質な綿で作られた布団は、柔らかくも沈み込まずアイーダの体を受け止めた。その感触に心が浮き立つ。
「ホラホラッ‼アパートでもいっしょに、ごろごろしたじゃんッ‼」
ムーニャがお腹を出してごろごろと喉を鳴らす。
クロの頃と変わらない姿に懐かしくなり、アイーダも全身をベッドに投げ出した。
まるで恋しい前世の頃に戻ったみたいだった。
アイーダがムーニャに笑いかけていると、不意に別の声が降ってきた。
「やはり、おまえも他の女と変わらぬな」
上がりかけていた気分が一気に落下する。
一番会いたくない、でも、こちらの言いたいことも、ぶつけなければ気が済まない。
そうなると一番会いたい相手とも言える。
部屋に麝香の香りが漂う。
最も会いたくなくて、会いたい相手——ヘサームは不敵な笑みのまま、鷹揚に歩み寄ってきた。
寝台でごろごろしていたムーニャは、いつの間にか、アイーダの髪の中に入り込んでいた。
浮かれている姿を見られ、アイーダは、あせって立ち上がった。
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