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「まちなよアイーダ。やめたほうがいいよぉ。ここは砂漠のど真ん中だよ。シェラカンドの環境自体が異例なんだからッ‼」
通路を走るアイーダと並走するように飛びながらムーニャが叫ぶ。
「こんな気持ち悪いセカイにいるくらいなら、砂漠で干からびたほうがずっとマシだわ」
いくらあのヘサーム王でも、踊り子の干物を取り戻そうなんて思わないだろう。
ただの自殺行為でしかないけれど、自らの性を売るよりも、アイーダにとっては、自尊心を守ることだった。
勢いに任せて後宮から飛び出したはいいが、不案内の王宮内。
ものの数分でアイーダは迷子になった。異国情緒が充満する建物は、すべてが迷路に見えた。
美しい建築装飾でさえも、自分を捕らえようとする悪魔の爪先に思える。
歩けば歩くほど深みにはまり、抜け出せない巨大な牢獄。
目が回り、アイーダは気が遠くなっていく。
壁に手を付きながら、音を立てないようにちいさく歩いた。
「アイーダ、戻ろうよぉ」
アイーダの血の引いた顔に、ムーニャが声をかける。
答えることなく、アイーダは足を動かした。
もう、どこを歩いているのかも分からず、視界が滲み始めた。
「おぉッ‼アイーダではないかぁ‼」
聞き覚えのある老人の声が、頭に響く。
(ジャービル王っ・・・・・・‼)
アイーダは身の毛がよだった。
よりによって、ジャービル王に遭遇するなんて。
迷ったことに気が取られて、ここが貴賓室の場所だと気がつかなかった。
「おうおう、しかもその潤んだ翠玉の瞳。そんなにワシと寝たいか。ホホホッ。昨夜まで恥じらいを見せていたオマエが、いつの間に熟したのじゃ」
ジャービル王は歯を見せながら、下劣な笑みを浮かべ、アイーダの細腕をがしっと掴んだ。
ぐいぐいと年に似合わぬ怪力にアイーダは引きずられる。
「やっ・・・・・・‼はなしてっ・・・・・・はなして、いやぁっ‼」
脚に力を入れて床に踏みとどまろうとするが、アイーダの体は、あっというまにジャービル王と密着してしまった。
皺くちゃの顔面がアイーダの胸に埋まり、ジャービル王は下卑た笑みを浮かべる。
「ほほぅ、なんと豊満な乳房じゃ‼しゃぶるのが楽しみじゃのう」
ぞくっと吐き気を伴う不快感が、アイーダの全身へと伝染した。
「いっ・・・・・・いやぁああああああああああッ‼」
アイーダが悲鳴を上げた瞬間、強い力が、色情倒錯の老人から果実を奪い取った。
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