第三章 剥き出しに 芽吹き 果肉は柔い ☆

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「まちなよアイーダ。やめたほうがいいよぉ。ここは砂漠のど真ん中だよ。シェラカンドの環境自体が異例なんだからッ‼」  通路を走るアイーダと並走するように飛びながらムーニャが叫ぶ。 「こんな気持ち悪いセカイにいるくらいなら、砂漠で干からびたほうがずっとマシだわ」  いくらあのヘサーム王でも、踊り子の干物を取り戻そうなんて思わないだろう。  ただの自殺行為でしかないけれど、自らの性を売るよりも、アイーダにとっては、自尊心を守ることだった。  勢いに任せて後宮から飛び出したはいいが、不案内の王宮内。  ものの数分でアイーダは迷子になった。異国情緒が充満する建物は、すべてが迷路に見えた。  美しい建築装飾でさえも、自分を捕らえようとする悪魔の爪先に思える。  歩けば歩くほど深みにはまり、抜け出せない巨大な牢獄。  目が回り、アイーダは気が遠くなっていく。  壁に手を付きながら、音を立てないようにちいさく歩いた。 「アイーダ、戻ろうよぉ」  アイーダの血の引いた顔に、ムーニャが声をかける。  答えることなく、アイーダは足を動かした。  もう、どこを歩いているのかも分からず、視界が滲み始めた。 「おぉッ‼アイーダではないかぁ‼」  聞き覚えのある老人の声が、頭に響く。 (ジャービル王っ・・・・・・‼)  アイーダは身の毛がよだった。  よりによって、ジャービル王に遭遇するなんて。  迷ったことに気が取られて、ここが貴賓室の場所だと気がつかなかった。 「おうおう、しかもその潤んだ翠玉の瞳。そんなにワシと寝たいか。ホホホッ。昨夜まで恥じらいを見せていたオマエが、いつの間に熟したのじゃ」  ジャービル王は歯を見せながら、下劣な笑みを浮かべ、アイーダの細腕をがしっと掴んだ。  ぐいぐいと年に似合わぬ怪力にアイーダは引きずられる。 「やっ・・・・・・‼はなしてっ・・・・・・はなして、いやぁっ‼」  脚に力を入れて床に踏みとどまろうとするが、アイーダの体は、あっというまにジャービル王と密着してしまった。  皺くちゃの顔面がアイーダの胸に埋まり、ジャービル王は下卑た笑みを浮かべる。 「ほほぅ、なんと豊満な乳房じゃ‼しゃぶるのが楽しみじゃのう」  ぞくっと吐き気を伴う不快感が、アイーダの全身へと伝染した。 「いっ・・・・・・いやぁああああああああああッ‼」  アイーダが悲鳴を上げた瞬間、強い力が、色情倒錯の老人から果実を奪い取った。
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