勝ちの価値を求める不毛な激闘

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勝ちの価値を求める不毛な激闘

昼の三時に、ある男たちが激闘を繰り広げていた。 こんな具合に……。 ■ 「……はああ~」 「おい、なんだよ、人の家で。気味の悪いため息だな」 「……ああ、ごめん。ただ、先週も競馬で大負けしたこと、思いだしてさあ……」 「なんだ、またかよ。こりねえヤツだなあ、お前も」 「うん、まあねえ。でも、勝ちたくてさあ」 「それで、勝てないんだろ? たぶんさ、向いてねえんだよ、競馬。だってお前、競馬はじめてからまだ、一度も勝ったことないんじゃなかったか?」 「うん、そうなんだよ。毎回、断トツの一番人気を単勝一点買いしてるのに、全部負けちゃうんだよ。いやになるよなあ。運が、ないのかなあ」 「……いや、運とか、そういう問題じゃないと思うぞ。その領域はもう、とっくに通り越してると思うけど」 「まいるよなあ。おかげでいつも、財布は空っぽ。お馬さんに、ニンジン買ってあげてるのと変わらないんだよ」 「だからさあ、もうやめれば、競馬? どうせ負けるんだし、金はなくなるし。若手社員には結構、きついんじゃねーの?」 「いや、それはできないよ。だって僕、競馬が大好きだし。競馬を、愛してやまない男だし」 「……まあ、向こうには、好意は持たれてないみたいだけどな」 「それにさ、今はツンツンの勝利の女神様も、いつかきっとデレデレして、微笑んでくれるはずなんだよ。だからその日が来るまで、僕は真摯にラブレターを書き続ける。ただ、それだけなんだよ……」 「……ふうん。まあ俺には、ビッリビリに破かれたラブレターの絵しか、想像できないけどな。何通だしてもきっと、焼却炉行きは免れないとは思うけどな」
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