勝ちの価値を求める不毛な激闘

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「…………あ?」 「♪~」 「……おい、もう一回言ってみろ。今、なんて言った?」 「僕、知ってるんだー。君が競馬で負けて電車賃なくなって、真冬にとぼとぼ、歩いて帰ったのー。『倍にしてやる!』って大事なお金のほとんどパチンコにつぎこんで、泣きそうになりながら、家まで帰ったのー。そんな君が僕に勝つなんて、あ、ありえるのかなあ? いくら僕でも君に負けるなんて、ぷぷ、あ、ありえるのかなあ?」 「…………」 「あ、あれ? ぐうの音も、でない感じ?」 「……おい」 「ええ? 声が小さくて、聞こえないよお?」 「……おい、テメー。だ、だれが、負けるって? ああ?」 「……」 「……ま、負け神様の、テメーによ。どこの、だれが、負けるっていうんだよ? おい?」 「んーとね、えーとね。――それは、キ、ミ、か、な☆ えへっ☆」 「……! じょ、上等だ! 勝負すんぞ、勝負すんぞコラア! とっとと、カード配れ! ボッコボコに、ボッコボコにしてやるからなあああ!」 「……よし、言ったね! ゲーム、スタートだ!」 (……やった! これで処分に困ってた物、処理できるぞ! ぷぷ、まんまと口車に乗せられちゃって! 僕が賭け事に勝ったためしなんて、一回もないのにさ!) 「――じゃあ早速、僕から賭けるね! 賭けるのは、これ! 二十回に一回ぐらいしか読みこまなくなった、DVDプレイヤーだよ!」 「ぐっ! ほ、本当にいらねえ! ……よし、テメーがそうくるなら、俺はこれだ! 穴が開きすぎてもはや素足に近い、ボッロボロの、臭いつき靴下だあ!」 「さあ、交換は二回まで! 二回交換したら、終わりのルールだからね!」 「ふん、言われなくても、知ってらあ! 三枚交換して、と。……よし、交換終了! お前はどうだ!?」 「うん、僕も終わりだよ! じゃあ、せーのでだそう!」 「ああ、分かった! いくぞ、――せーのっ!」 ……………。 「…………は?」 ……………。 「……お、おい、ちょっと待て。う、嘘だろ……?」 ……………。 「……ぼ、僕がツーペアで、き、君が、ワンペア……。ぼ、僕の、勝ち……?」
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