勝ちの価値を求める不毛な激闘

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「……」 「……」 「……あ、じゃ、じゃあ、この靴下は、僕のだね。……も、もらっていくよ……?」 「……あ、ああ、そうだな。じゃあ、どうぞ……」 「……あ、ありがとう。うん、ありがとう……」 …………。 「……! お、おい、次だ! に、二回戦、やるぞ!」 「……! う、うん! 二回戦だ! つ、次も、勝つからね!」 …………。 「ふ、ふん! 言ってろ! ほえ面、かくんじゃねえぞ!」 「そ、それは、こっちのセリフだし! ……よし、じゃあ、カード配るね……」 「お、おお、ありがとう……」 …………。 「……はい、これで、五枚。カード、配り終わったよ……」 「あ、ああ。ほら、お前から賭ける物、だせよ」 「あ、そ、そうだね、……じゃあ、これ。結婚式の引き出物の、どう使っていいか分からない、新婚夫婦の写真入り大皿!」 「お、おお、これは、なかなかだな! ……な、なら、俺はあれ! 今思うとなんで買ったか分からない、金環日食を見るためのグラスだ!」 「カ、カード、交換するね!」 「あ、ああ、俺も、交換するぞ!」 「……これで、二回目……」 「……俺もこれで、二回目と……」 「…………! ひ、ひ、ひぃー!」 「……な、なんだ!? お、お前、なんて声だしてんだよ!? 一体、なにを引いたんだよ……?」 「……カ、カ、カード、だ、だしていい? 僕、だしていい……?」 「……あ、ああ、いいぞ……」 「い、いくよ、……せーのっ!」 ……………。 「……う、う、嘘だろ……?」 ……………。 「……ロ、ロイヤル、ストレート、フラッシュ……」 「……ポ、ポーカーで、さ、最強の役だ……」 ……………。 「……」 「……」 「……」 「……」 ……………ぷっちん。 「……あ、あは、あはははははははは」 「……お、おい、ど、どうしたんだよ?」 …………。 「ど、どうやら本当に、女神様が、ご降臨されたみたいだ……。ラ、ラブレターがついに、女神様に、届いたみたいだ……」 …………。 「ふ、不用品押しつけるために、はじめた勝負だったけど……。こ、こうなったら本当に、勝ちぐせつけて、今度こそ、ぼ、僕は、競馬に……」 「……お、おい、なにを、ブツブツと……?」 「――さあ、次だ! 次の、勝負だよ! み、見ていてくださいねえ! 女神様! 立派に勝ち続けて、僕はきっとあなたにふさわしい男に、なりますからねえ!…………」
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