丑の刻参り

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丑の刻参り

――こーん、こーん、こーん……  草木も眠る午前三時。神社の境内には釘を打つ音が響き渡っている。それ以外の音は何も聞こえない。  そこには、白一色の着物を着た若い女が居て、わら人形に五寸釘を打ち込んでいた。 「どうして……、どうしてなの?」  誰もいない中、わら人形に向かって一心に金槌を振り下ろし、釘を刺す女。ところが…… 「ものすごい怨みですね。よほどのことがあったのですか……?」 「だ、誰なのあなた!?」  女のうしろには、黒い着物を着た、見た目には高校生くらいの少女が一人。不思議なことに全く気配を感じなかった。 「いえ、よほどのことがあったのかと思いまして……」 「野暮な質問ね。よほどのことがあったから、こうして丑の刻参りをしてるんじゃないの」 「あの、あたしで良ければ、ご相談に乗りますよ」 「ふん、見たところ高校生ぐらいじゃない。力になってもらえることなんてないわよ」  しかし少女は、わら人形に書かれた名前をいちべつして、 「お話だけでもいいですから。聞かせてください。これも何かの縁ですから」  そういって譲らないので、女は「じゃあ、話だけでも」と言って、二人で一緒に車に乗った。
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