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エンマ大王の裁き
魂が体から離れてしまった洋子は、みひろから思いもよらぬことを告げられた。
「おかげで、私の未練は晴らせました。ありがとうございます」
「ありがとうございます、ってどういうこと? お礼を言うのは私のほうですよ」
一呼吸置いてみはるは小声で、
「私は、あの男に襲われて、自殺してしまったのです……」
それを聞いた洋子は、
「じゃあ、五年前の事件の被害者って!?」
「私です。あの男だけはどうしても許せなかった……」
「だからこの朽ち果てた神社で、彼を殺すチャンスをうかがってたの?」
「そうです。もう神様もいなくなった神社ですから……、あの男を殺せる機会をうかがっていました」
そこまで話すと、みひろの体が透明になって光り始めた。彼女は幽霊だったのだ。
「この後私は地獄へと参ります。洋子さんは天国に行けるよう、お祈りしていますね」
「ちょっと待って! それじゃああまりにあなたが……!」
「いいんです……」
「待って!」
その瞬間に洋子の体も光り始めた。
ほどなくして二人は黄泉の国のエンマ大王の前に立った。
みひろと洋子はひととおり話したのち、洋子は必死にみひろをかばう。
「私は地獄行きでかまいません! ですが、みひろさんはあまりにもふびんです。どうか天国へ……!」
「いえ、そんな、あたしは……」
二人の話を聞いて、エンマ大王はひとつの決断を下した。
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