占い師ヒナコ姐さんの、お手製あんみつを召し上がれ

ヒナコ姐さん、深夜のファミレスを来店する

　はぁい、そこのお嬢さん。ごきげんいかがぁ？
　ほら、貴女よ貴女～。大きなメニューを抱きしめ、ぼぉ～と天井見上げている貴女よ。
　ちょっち、ちょっち良いかしらん？　ワタクシ、お客さん。お客サンなのよ！　バタバタ慌てだして「あ、あ。お客さま、何名様ですか？」って、見ての通り、一人なのが分からないかしらん？
　それとも、深夜のファミレスに独りで来店した女の寂しい心に、グサリと見えない剣でも刺し込んだつもりなの？

「いえ、アタシ、そんなつもりは」？
　分かっているわ。冗談よ、冗談。ちなみにワタクシはスモーへビーカー。喫煙席に案内してくれると嬉しいわ。あら？　喫煙席ガラガラじゃない！　一番奥になる四人用テーブル席にしようかしらん。何だか辛気臭くて、幽霊でも出そうな雰囲気しているじゃない。何そんな顔をしかめて？　ひょっとしてボッチの客が四人席を占領したらマズイの？
「ウチは幽霊なんか出ません！」って、まあ怖い顔して……でも、本当にそうなのかしらね、ウフフフ。

　ふ〜、合成革のソファに腰掛けると、何とも言えない気分になるわね。メニュー？　どうもご親切にアリガト。このメニューなんだか生温かいわね。貴方がずっと抱きしめていたせいかしら？
　ハンバーグ定食に、チキンソテー、照り焼き丼、色々美味しそうな料理が並んでいるじゃない。でも、今夜のワタクシはもう注文は決まっておいでよ。こ、コレよ、コレ！　あんみつ！　あんみつ！　あんみつ！　あんみつ！　あんみつをクダサイな〜。しかも、もうありったけよ！　お店中のあんみつを持ってきて頂戴な。

　うん？　どうしたのそんな顔をして？　お勘定を心配しているのね？　あんみつを食べるだけ食べた後、トイレに行くふりしてドロンと消え去る……無銭飲食を警戒しているの？
　ウフフフ、心配しなくてよろしくってよ、ワタクシこうみえても超一流の占い師、シェフシェンコ・ヒナコ様なのよぉん。ほら、ご覧なさい、この分厚いお財布を！　ヒラヒラヒラ〜、お札の大乱舞。景気よく前払いしちゃうんだから〜、早くあんみつを持ってきて頂戴な。