ヒナコ姐さん、あんみつを食べまくる

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ヒナコ姐さん、あんみつを食べまくる

 う〜ん、デリシャスね。この甘ったるい黒蜜が唇にこびりつく感触がまた堪らない! 此処のあんみつは……なかなかの味じゃなくて。これならグルメのワタクシの舌も唸ってしまいそう。  ハーイ、ハーイ、そこのお嬢さんカモンプリーズ!  さっき注文取ってくれた貴女よ、アナタ。 「お待たせいたしました、お客様」って?  愛想笑いをしても、ほら右の頬がプルプル痙攣して、ひきつっているじゃない? 貴女を呼んだ理由は一つ……オカワリ! あんみつ、もう一個追加お願いしま〜す!  それにしても、新しいあんみつが来るまでは、なんかヒマだわね。ちょいと貴女? 向かい側にお座りなさい。  お名前は?  バイトさんなの?  「お客様、空になったお皿を下げますので」?   ダメよ。まだ下げないで頂戴。食べ終えたお皿を積み上げていくことが何よりも楽しみなの。ほら見て見て〜、回転ずし状態になってきたじゃない? 何皿あるのかしら? 貴女も一緒に数えて下さらない? 一枚、二枚、三枚、四枚〜、九〜ま〜い。一枚足りな〜い! 冗談よ。冗談。次きたあんみつを食べつくせば、これで今夜のミッションも大成功のはずだわって、これはワタクシの独り言。別に、『深夜にあんみつ食べまくり選手権』を独りで開催している訳ではなくてよ。気にしないで頂戴。ウフフフ。  あら、貴女とお皿を数えている内に、新しいあんみつが到着したみたい。それでは、両手を合わせていただきま〜す。  あぐ、はぐ、むぐ! キュルキュルゴリゴリ、ムシャムシャ、ゴキュゴキュゴキュ〜。あ〜美味しかった。満足マンゾク。それではお会計お願いしまーす。せっかちなワタクシは、あんみつ代金を既に前払いしてあるし、お釣りとレシートを席まで持ってきてくださる?  それにしてもチョット食べ過ぎたかしら? 動くことが面倒になってきた様な……おまけにうつらうつら眠くなってきて……いけない! 夜があける前に棲家に帰らなくては。太陽の陽を浴びたりしたら……別に吸血鬼じゃなくても、紫外線は美容の大敵なのよん。  あら? 「お客様、まいどありがとうございました!」って、お釣りとレシート持てくるのだけは神速じゃなくて? もしかして、ワタクシに早く帰って欲しいとか? え? そんなことは無い? ウフフフ、冗談よ、冗談。それではそろそろお暇しようかしら。お店のエントランスまで手を貸して下さらない。どっこいせ……うん? え? アララ? ナニコレ? ちょっと貴方がくれたこのレシート、間違っていなくて? ホラ、よく見てご覧なさい。深夜料金が加算されている事なんてどうでも良くってよ。合計金額がおかしいのじゃくて、上に印字されている日付よ、日付。AM2:55? 「AMは、午前という意味ですけど」?   キィー! そんな事いくらワタクシだって分かっているわ。問題は此処よ。ココ! 二時五五分って? まだ三時前って事よ? ほらほら、ワタクシの懐中時計をご覧なさいな。今は午前三時五五分を指している。一時間、遅くなっているだなんて、なんていい加減なファミレスなのかしら?  でも、まあいいわ。マニュアルを徹底しても、所詮働いているのは人間なのだもの。誰でもミスはあるのだから……貴方しっかりレジの時刻を直しておくのね。  え? 間違っていない?  「今は午前二時五五分です」って?  お店の壁にかけられた丸時計も、貴方の安っぽい腕時計も……あら、ホントだ午前二時五五分。ということは……間違っていたのはワタクシの懐中時計の方? 遅かった訳ではなくて、実は一時間早かったというの! キャー!
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