占い師ヒナコ姐さんの、お手製あんみつを召し上がれ

今夜は『グラニューデイ』？

　キャー！　お化けよ！　亡霊よ！　ゴーストよぉ！
　ワタクシの前に、グラニュー男爵らしきゴーストが！　よしのちゃん貴女も見えて？　そう、シルクハット被った、小太りのオジサンよ。貴方の右隣に座っている……彼よ！

「アタシ、お水とお絞り取ってきます！」って、震えながら立ち上がろうとしてももう遅いわ。ホラ、金縛りで動けないでしょ？　さてこれからが本番。グラニュー男爵の注文するモノは唯ひとつ……あんみつよ！
「でも、あんみつは売り切れで……それもこれもお客様が先に全て……」　

　キィー！　この期に及んでワタクシのせいにするおつもり？　年に一度の『グラニューデイ』に食材をたっぷり用意していなかったファミレス店員の貴女が悪いんでしょ！
「アタシ、『グラニューデイ』なんて知りません！」ですって、涙目になって怒らないで頂戴。さっきまでの愛想笑いは何処に行ったのかしらん？　とにかく、グラニュー男爵にあんみつを差し出す必要があるわね。年に一度の楽しみにしていたあんみつが食べられなければ、グラニュー男爵は怒りプンプンになるわ。

　え？「代わりにティラミスじゃ駄目なんですか？　賞味期限間近のモノが冷蔵庫にたくさん残っている」ですって？　駄目よ、ダメダメ。あんみつ以外を真夜中の三時のおやつに食べさせたら……呪われるわよ、貴女。ホラ、窓ガラスに映ったよしのチャンの顔をよく見てご覧なさい。口元あたりに、ホラ細長い、ナマズのヒゲみたいなモノが生えていなくて？　ウフフフ。もうグラニュー男爵の呪いは始まっているみたい。早くあんみつを食べさせない限りは、よしのチャンの口元に生え始めた細ヒゲはどんどん成長していくって訳。

　え？「もしかして、アタシをソファに座らせたのは、アタシを囮にするため？」
　ピンポーン、大当たり。でも大丈夫安心なさいな。よしのチャンが男爵のお相手をしている間に、ヒナコ姐さんはノーマーク。その間に、特製あんみつを作ってきてあげるわ！あんみつの食材は残っていなくてもワタクシの手にかかれば大丈夫でしょ。五分ばかり此処はお願いね。それじゃ厨房に行ってきまーす！