2 十字架

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2 十字架

泣いていた。 やわらかな熱が離れていくのが淋しくて。 あたたかな瞳が閉ざされるのが淋しくて。 その熱で手を握って。 その瞳に私を映して。 それだけが、今の気持ち。今の私の全部。 全部全部、私は黎だけになっていた。 朝は当たり前のように来た。 夜が続くことを願ったのは初めてだ。 遮光カーテンの向こうに見えた朝焼けの色に、絶望の光もあるのだと教えられた。 離れることを嫌だと思った人と出逢ったのは、夜だった。 逢いたい。逢いたい。 でも、あの人が私に架けた願い。人間として、生きる。……それも叶えたい。 「真紅ちゃん、顔色悪いよ?」 「え? あ、おはよう」 義務感? わからないけれど、多分彼はこういう人間の生活はしていなかったのだろう。 ならば私が叶えなくては。 だって、ね。 「おはよう。昨日も梨実(なしみ)さんのとこ?」
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