今何時?

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今何時?

「ごめんなさい、ごめんなさい。ごめ、んなさい!ごめんなさいっっ!!ごめんなさ、」 …ガシャンッ。 自分の声と、何かが落ちた音に、はっ、と飛び起きた。 現実ではなかった。そのことに安堵する自分がいる。 どうやら、目覚まし時計が落ちたらしい。 自然に落ちたとは考えにくいから、私の手で落としたのだろう。 …それくらい、手を振り回してしまうくらい、恐ろしい夢だった。 もう二度と夢なんか見たくない、と激しい動悸がおさまらない心臓が訴えている。 どうして、わたしはあんなに謝っていたのだろう。 恐い夢であったことしか覚えていない。 夢の中では一瞬だけど実際は数時間も過ぎて いた、なんてことがよくある。けれど、今回だけは永遠のように感じた。 なんとなく心配になって先ほど落下した時計を拾う。 『…まだ、三時』 ぽつりと、口から声が出る。 私がきらいな時間。 ううん。嫌いになった時間。 かつて読んだ小説の中に、化け物が決まって三時にやってくる設定のものがあった。 リアルな描写と、その化け物の正体が自らの悪事であったことから、幼い私はフィクションだと割り切ることが出来なかった。どんな人でも化け物を飼っている可能性はあるんだ、と絶望した。 いつか自分が化け物を具現化してしまうんじゃないかって、怯えていた。 何往復も読んで、化け物への対処法を学んだものの、私は、良い子で過ごすことを固く誓った。それはもう、閻魔様のお目にかからないほどに。
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