今何時?

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【…の、お前が…】 ぞわっと鳥肌が立つ。 声が近づいている。 どこ、どこ、どこなの。 窓の外ではない。 一向に風は音を立てているから。 なら部屋の外? いや、今この家に侵入できる人はいない。 …ヒト、はいない。 【…に…め】 …!わかった。 階段だ。 一階から何かが登ってくる。 ヒトではない、動物ともいい得ない、何かが。 私を狙ってる。 タン。 タンタン。 タッタッタッ。 陽気な足音で登ってくる。 焦る私に合わせるように徐々に確実に速度を上げてやってくる。 【かえ、せっっ!!!】 足音とは裏腹に怒気を増す叫び声に、ひっ、と声になりきれなかった息が音を出す。 【おまえが、お前が】 ダンダン。 足音は益々強い足踏みとなっている。 誰か起きやしないだろうか、なんて考えていられるほど悠長でいられる状況にない。 【奪ったんだっ】 ダンダンッ! ダン…。 階段を、登りきっ…た? ヒタ。 待って、まって、こないで。 こないで。 ヒタ。 ヒタ。 ヒタ。 あのこだ。裸足だった。あのこは。 ヒタ。 あのこがくる。 シンユウのあのこ。 “かつて”名前を呼びあった、あのこが。
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