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【…あ、あ…】
あのこのグシャグシャの体が、人間のそれに戻り始める。
相応の痛みを伴って。
「う、い。…痛、痛い、たすけ」
『自業自得。あの日、雪山でお前を殺して棄て置いたのも、全部お前が奪った所為』
私の愛する彼を、誑かすなんて。
正気の沙汰とは思えない。
『その後私から生まれた化け物がきて、闘って勝った私は晴れて』
あのこに、跨る。
もはや自分が跨っているのか、覆いかぶさっているのか、圧迫しているのか、わからない。
カーテンの隙間から見える窓に、化け物が写っている。
私という名の化け物が。
化け物を喰らった化け物が、楽しそうにしている。
その化け物はすべてのパーツがぐちゃぐちゃで四肢が歪についていて、口だけが大きく、鋭い歯をチラつかせている。
ああ、醜い存在が、女を、覆っている。
『化け物を飼ったんだ』
永遠に、終わらない世界で苦しめばいい。
化け物は、終わらないのだから。
『ようこそ、わたしの三時へ』
落ちた時計は動かない。
“折れた”針は、指さない。
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