ふと見た、鮮烈な。

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ふと見た、鮮烈な。

 聞いただけで思わず嫌悪感を覚える声だった。  どんなことをしてるか、知れたものじゃない。僕の頭は後ろ暗い妄想ばかりで埋め尽くされていくけれど、それ(・・)を現実でするようなやつには関わり合いになりたくなかった。  だから、僕はその一部始終を携帯で撮影しようと思った。  どんなことをしでかしているのか、何をやらかしているのか、何が起こっているのか、どんな顔で、どんな状態で、そのすべてを記録してやろうと思った。・決して後ろめたい願望があるわけじゃない。決して、好奇心なんかじゃない。これはあくまで正義感で、少しでもこんなことをしでかしたやつを捕まえる助けになれば……そういう思いで…… 「うんうん、そうそうそう……可愛いね、あぁ、可愛いよ、ふふふ」  だから早く、カメラを向けないと!  急いで携帯を(かま)える。携帯を取り出す手元が覚束なくて、それでもどうにか取り出した携帯を、どうしようもなく震える手で構える。早く、早くしないと、早くカメラに切り替えて、早くレンズを向けて、早く撮影しないと……!  じゃなきゃ終わる、こいつのしていることが終わってしまう。早く撮らなきゃ、早く録画しなきゃ……! 「あっ……!」  そんな!  なんで、よりによってこんなときに!?  覚束ない手元でカメラを起動して、写真モードからビデオに切り替えようとしたときだった。指がもつれて、手が滑った。  手のひらからこぼれ落ちて、携帯が宙を舞う。  受け止めようと伸ばした手が、逆に携帯を弾き飛ばしてしまう。しかも、よりによって橋の真下――赤いランドセルの子にどうにか(・・・・)している男の視界に入ってしまう場所へ。 「ぁ、――――」  拾いに行く暇もなく、携帯が僕の手を離れていく。無様に転がって、草むらを駆けていく。  駄目だ、もう終わってしまう……!  早く見なきゃ、駄目だ、まだ終わるな!  もうちょっと待ってくれ、まだ、あと少しだけでいいから……っ!!! ちょっとだけでも、見せてくれよ……っ!  けれど、そんな願いなんて通じるわけがなかった。  慌てたように去っていく足音を追いかける暇なんてなくて、残されていたのは、たったひとり。 「………………、」 「あんた、誰? ずっと覗いてたの?」  そこにいたのは、パッと見た瞬間女の子に見える、華奢な感じの男の子だった。
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