あとがき

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 人が自分の持っているポリシーを変えるのは容易ではありません。それは、それらのポリシーが自分の好き嫌いや特質、経歴に基づく感情や価値観に根付いているからだと思います。  特に、他人から言われて変更する事は「ほぼ100%」無いと言っていいでしょう。更に、それが自分の不利に働く場合は尚の事です。    『お父さん』は、主人公に寺を継いで欲しいと願っています。  しかし、上記の理由から『無理に言っても意固地になるだけ』と普段は何も言いません。そこで、娘が持つ『唯一の弱点』から絡め手で攻める事を思いつきます。  実は、主人公の兄は『イケメン』でした。  心に蓋をした主人公がイケメンの場合のみ反応するのは、そうした憧憬が根本にあります。  結果として、主人公は自身の中から『悟り』を得ます。  人間は、自分の心の裡から出たものに対しては、それが如何に困難であろうと強いコミットメントを発揮するものだと私は思います。  最後に。  作中では『運慶は荒々しい作風で』と書かれていますが、最晩年の作においては、むしろ慈愛の表現を模索しようとした形跡が見受けられます。あえて『らしさ』を捨てた『新たな境地』への船出というか。それもまた、何らかの天啓を受けたポリシーの進路変更なのでしょうか。  自身の死後、息子である湛慶を快慶に預けたのも、快慶の目指す『慈愛』に仏の在りようを追求しようとしたのかも知れません。  長々とお付き合いを頂き、どうも有難うございました(><;)  作者 拝      
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