そして、雨が上がる時。

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そして、雨が上がる時。

 物心ついた時から、ほぼほぼ僕のあだ名は二つに一つだ。  つまりチビかデブ、のどちらかである。あるいはその派生。豚だのちんちくりん、だのと呼ばれたことはあるけれど、それ以外のまともなあだ名が僕についた試しはない。  自分の容姿が、幼い頃から大嫌いだった。  顔立ちがどうのというより、小柄なくせに太りやすいというのが問題なのである。ついついごはんを食べ過ぎてしまうのは否定しないが、僕と同じだけ食べてるハズのクラスの人気者連中は全然太る気配がない。  きっと生まれつきの体質、という奴なのだろう。それでも陽気で、ムードメーカーなキャラでも気取ることができたなら話は別だっただろうが、生憎僕は引っ込み思案でおとなしい性格だった。  チビでデブ、運動神経も勉強も何をやっても駄目、おまけに空気が読めないと来た。――そんな僕がクラスで浮くのは必然というヤツで、気づいたらいじめの対象になっているのもまた当然と言えば当然だったのだろう。  男の達の露骨なからかいや悪口も嫌だったが、もっと傷ついたのは女の子達の無視と陰口である。彼女達が僕を“マリオ菌が感染る!”と言って嫌っているのは知っていた(ちなみに、真理雄(まりお)というのが僕の名前である)。  僕が触れた場所には絶対に触りたがらなかったし、間違って触ってしまったら壁にべたべた手をすりつけて拭ったり、見せつけるように手洗いに走っていったのをよく覚えている。僕の隣の席はいつもババ抜きのババより酷い扱いだった。先生はそんな僕の状況に気づいていたはずなのに、特に何の対処もしてくれようとはしなかった。  となりの席がハズレくじ扱いされてでも、それでも僕は先生が席を決めてくれた方がずっと楽なのに。どうして先生は、好きな人同士で席を決めたい、という多数の意見ばかりを尊重するのだろう。  ひそかに直談判した僕に先生が言った言葉がこれだ。
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