3時間だけの恋人1

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3時間だけの恋人1

(なんで、どうして、こうなった……)  老若男女、人種問わずの人混みの中、僕は一人、自問自答していた。 (そもそも、話が違う。こんな話は聞いていない。何一つ)  一定のテンポで、それでも隣人とは離れすぎないよう、気を遣いながら歩く。  真横を一瞥すると、そこには一人の女子。  小柄で、華奢で、少し地味だが……正直可愛い女の子だ。  女子高生と言われても疑いようのない程の童顔だが、聞くところによると信じられないことに大学生だという。  けれど、今はそんなことにかまけている余裕はない。  昨日の自分を密かに怨みながら、内心悲鳴をあげた。 (僕は、女の子が苦手なんだぞ……!)    ◆ ◆ ◆    その誘いは唐突で、なんの前触れもなかった。 『明日、暇?』  ポンと軽快な電子音を響かせて、僕の携帯に一通のメッセージが届いた。  低気圧から起こる頭痛に呻いていた僕は、緩慢な動作で携帯を掴み、そのシンプルな文面を暫く眺めていた。メッセージの送り主は、後輩の女子大生。  通学している大学の同じサークルに所属しており、共通の趣味が高じてこうして適度に連絡を取り合うような関係だった。だが、勿論彼女などではない。タメ口でメッセージを送ってくるのは、あくまで後輩ではあっても彼女は僕と同い歳だからという、ただそれだけが理由だ。 『バイト、手伝って欲しいんだけど』  後輩から二つ目のメッセージ。  珍しい。後輩がバイトをしているというのは何となく耳にしていたが、僕が手伝えるようなものなのだろうか。 『いいよ。けど、どんなバイト?』  少し悩んでから、承諾のメッセージを送った。  週末、特に用事がある訳でもない。ましてや万年金欠の貧乏学生にとって、臨時収入になり得るのなら断る理由もなかった。 『良かった! 急に人手が足りなくて困ってたんだ!』 『バイト内容は着いてから教えるわ。だから明日、○○駅に15時集合』 『遅れないでね、絶対だから……!』  そんな一方的なメッセージを送りつけ、なんなら集合場所と時間指定までをしてくるあたり、準備万端である。 『わかったよ』  バイトの内容は気になったものの、反論すら許さないような雰囲気に諦めつつ、僕は次の日、約束の場所へと向かった。
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