転生シンデレラは午前3時まで

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 なぜかお留守番を求めたシンデレラが不可解すぎて理解できなかったけれど、これはチャンスだと思い急遽実行したことであったけれど、シンデレラがここにいるということは、計画が失敗した証拠。  盗賊を返り討ちにしたのか、そもそも事前に計画を悟られてしまっていたのかわからない。どちらにしろ悪事はバレている。そう勘違いしていた3人。  真実は盗賊の計画ミスである。まさか舞踏会へ出向くとは思わず、転生シンデレラが寝静まってから襲う算段であった。つまり、転生シンデレラは3人の悪事どころか、盗賊の存在自体に気づいていなかった。そして、その盗賊がまだあきらめずに、宮殿まで追いかけてきていることも。  何も知らない転生シンデレラは童話通りに進んでいる。そんな手ごたえを感じながら王子と踊って、あっと言う間の至福の時を過ごしていた。  間もなく0時を迎える。童話では差し迫った時間に名前も告げられず、逃げ去る途中の階段で、あのガラスの靴を落としてしまう。  ここで転生シンデレラは選択を迫られる。童話通りに0時で消えるか、3時までゆっくり楽しんで帰るのか。  確実なのは0時で帰ること。ここまで微妙に童話とずれていることは認識していた。3時間のズレがどこまでハッピーエンドに影響してくるのかは不透明。たったの3時間のためにリスクを犯す必用はないのである。  だか、転生シンデレラはこの日のために、踊りの練習を積み重ねてきた。朝、昼、晩の三部練習を3ヶ月。練習相手はもちろん、お義母様と2人の義姉。サボりがちな3人の性根を叩き直すところから始まって、肉離れは怪我じゃないって教え込んだ。そうやって迎えた王子とのダンスである。  王子は理想どうりの美男子で踊りも上手。息もぴったり合って練習の成果を発揮できていた。この瞬間がたまらない。空手家時代もそうだった。目標を定め、それに向かって鍛練し、その成果を発揮できた瞬間の快感が転生しても忘れられない。  奏でる音楽が全日本空手選手権決勝の歓声に聞こえ、嫉妬の眼差しを向けるお姫様たちが観客に見えた。踊る転生シンデレラはもう止まらない。このまま疲れ果てるまで踊っていたい。そう思ってしまった。
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