転生シンデレラは午前3時まで

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 0時なんてあっという間に過ぎて、休むことなくぶっ通しで踊り続けて間もなく3時。日本一のポテンシャルの体力に陰りはなく、もうひとつギアを上げられる。そう思っていた。  その一方で、王子は口が閉じれないほど息が上がり、心なしか唇が紫色である。整えた前髪は乱れ、鬼太郎のように片目を隠している。すでに汗は出ない。出尽くした汗が服に染み込み、体を冷やして悪寒を呼び起こしている。休憩を望もうにも、口の中がカラカラで声も出ない。  転生シンデレラはそんな王子の姿を見て、決勝戦で苦戦していた自分の姿を思い出していた。足首にケガを負い、前日の高熱で満身創痍で挑んだ戦い。王子と同じように口で息をして、汗も出なくて、悪寒に震えていた。  何度も諦めようかと思ったけれど、その先に栄光があることを知っていた。だから、心は折れなかった。そして、手に入れたのが日本一という成果。 「王子様。今ツラいですよね、休みたいですよね」  王子は頷いた。これでようやく休めるのだと安堵した。 「王子様。ここからです。頂点に立つためには、この苦しみを越えねばならないのです」  王子は何を言っているのかさっぱりわからなかった。疲れのせいで自分の頭が回っていないのかとさえ思っていた。ただ、わかっているのはこのダンスがまだ終わらないのだと言うこと。このまま死んでしまうのかとさえ思っていた。  そこへ救世主が現れた。3人の盗賊である。転生シンデレラの後を追い、出ていくチャンスを待っていた。大広間には悲鳴が上がる。少し違った意味で悲鳴を上げたのは、お義母様と2人の義姉。そして、声にならない安堵の雄たけびを上げたのは王子である。ようやく、ダンスが止まったのである。 「王子はどこだ」  盗賊のお頭が叫んだ。転生シンデレラを追ってここまで来たものの、門の前で兵士に止められ、思いかげず殺してしまった。もはや後戻りはできないと腹をくくり、狙いを転生シンデレラから、宮殿のお宝へと切り替えていた。まずは王子を人質に取ろうと考えたのだ。  その王子は大広間の真ん中で、大の字になって倒れている。毒でも盛られたような過呼吸に苦しんで、毛先まで汗でびしょびしょに濡れている。盗賊から見ると、その傍らに立っているシンデレラによって倒されたようにしか見えない。
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