山の穴

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「今度は安西聡くんが……」  吉田海輝と入れ替わるようにして、今度は安西聡が姿を消した。二人は俺の一学年下で、同じクラス。安西は吉田と一番仲が良かったそうだ。彼は居なくなる前、周りの生徒に裏山へ行くと()らしていたらしい。  休み時間、本田映司と明石光太郎は俺の席の前に来ると、言った。 「これってさーー生贄(いけにえ)みたいじゃね?」 「生贄? 物騒な言葉使うなぁ」 「だってさ、吉田が戻って来たら、今度は安西が居なくなった。誰か一人が犠牲にならないと、山の中からは戻れない、的な感じしない?」 「確かに。俺の婆ちゃんは山の穴に落ちたって言ってたぞ」  光太郎の言葉に、俺も同調した。 「そうそう! 俺の爺ちゃんも言ってた。山の穴って文字通り……山の穴なのかな?」 「子どもが抜け出せないほどの穴? でもそれなら、警察にも見つけられるんじゃね?」  映司が納得のいかない表情を浮かべて口を尖らせると、光太郎が言った。 「……いや、これも婆ちゃんから聞いた話なんだけど。大人には見つけられないらしいぜ。見つけるには、子どもの力じゃないと……」 「でも、例え安西を見つけたって、助けるためには自分が犠牲にならないといけないんだろ?」  俺が語気を強めて言うと、映司が「まぁ、さっきの話も、俺の予想に過ぎないけどね〜」と、曖昧に話を終わらせた。  誰かが消えた人間の代わりに生贄になれば、前に居なくなった人間は助かる。これこそが爺ちゃんの言っていた【方法】の答え合わせだと思った。
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