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俺は一時間目が終わると、映司と光太郎に宣言した。
「ちょっと俺、柚葉のこと探して来るわ!」
「はぁっ!? お前、何言ってんの?」映司が目を丸くした。
「てかさ、山の穴の噂話が本当で、映司の予想が当たってるなら。……あの子を最後の犠牲者にして、このままスルーで良いんじゃね?」
俺は光太郎の言葉を受けて、ドガシャーンと、雷が落ちたような衝撃を受けた。気が付くと俺は、光太郎の胸倉を掴んでいた。
「お前! よくもそんな酷いことを!!」
「悪い悪い。お前があの子のことを気にかけるのは判るけどさ……俺だってお前のこと心配してんだぜ? もしお前が山の穴に落ちたりしたら、元も子も無いじゃん」
正論だった。ごもっともな意見だった。光太郎は、俺の身を案じてくれている。
……それでも俺は行かなくてはならなかった。二人は俺の腕を掴んで引き止めたが、それを振り払うようにして、俺は駆け出していた。
玄関に行き、上靴から外靴に履き替えていると、金髪プリン頭の女性が、校舎内に入ってくるところだった。
「ちょっとごめんだけど。校長室ってどっち?」
俺は聞かれた質問に、指差しで答えると、彼女はサンキューと俺の目を見ずに言った。それからも彼女は、何やら独り言をぶつぶつ呟いていた。「あーあ。だから子どもは嫌いなんだっての。面倒かけやがって……」
俺は女の呪詛のようなものを振り切るように、外へ飛び出した。ランドセルも傘も、学校に残したままだった。
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