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今、助けて
「『止まない雨はない』なんて、少し偽善的すぎると思わない?」
雨の十七時、コンビニの軒先で。
黒いショートボブを少し濡らした彼女、神立旱はそう言った。
「だってそれ『いつか晴れると思うから、それまで苦しみに耐え忍べ』ってことでしょ? そんなのやだよ。その人は今助けてほしいのに。わたしは雨の中にいる人に傘を差してあげられる人になりたいな」
雨宿りをする彼女の前で、ビニール傘を差す僕は言う。
「それは傘を忘れたけどコンビニでまた新しい傘を買うのは悔しいと思ってる今の君に、僕の傘を貸せということ?」
「だってこの前もここで傘買ったんだよ。このままじゃ傘専用のお得意様になっちゃう。そうなったら終理くん責任取れる?」
彼女は恨めし気にコンビニの店内を睨む。
「これを貸すと僕が濡れちゃうよ?」
僕が訊くと。
「でも一緒に濡れたら、ちょっとは楽になるでしょ?」
彼女は笑った。
「……なるほどね」
そう釣られて笑いながら。
僕だったらどうするんだろうな、と。
他人事のようにそう思った。
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