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特に朝は晴れていて午後から雨予報の日は、家に傘を忘れた彼女がコンビニの前で、傘を買うか雨が止むのに賭けるかで悩む姿をよく見かける。
「てか神立の家の犬は元気?」
「何で急に犬の話になった? 話逸らすにしても、せめて私のこと訊いてよ」
「君が元気なのは見てればわかるからさ。名前なんだったっけ。ポチだっけ、太郎だっけ」
「いやいやそんなありきたりな名前じゃないから。神立家のネーミングセンス馬鹿にしないで」
「じゃあなに」
「ポチ太郎」
「…………」
僕は言葉を失った。ありきたりじゃなければいいのか?
「ポチ太郎」
「二回も言うな。じわじわくる」
「そういうの、じわるって言うんだよ」
彼女が笑ったところで、僕たちは十字路に差し掛かった。
この十字路を僕は真っ直ぐ進み、彼女は左に曲がるのだ。
「じゃ、またいつか」
次いつ会えるかもわからないが、そんな風に軽く言って彼女は帰っていった。
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