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「雨って嫌だよねえ。何が嫌って、玄関に傘が増えてくのが嫌だよね」
「普通はそうならないはずだけどな」
二日後。
僕たちはまたコンビニの前で出会った。再会が早すぎる。
「あとここのコンビニ人手不足で、いっつもレジおんなじ人なのも嫌」
「それ雨関係ないだろ」
「でもここの経営の雲行きは怪しそうよ」
「うまいこと言ってないで早く傘買ってこい」
彼女はまだ文句がありそうな顔でしぶしぶ店内に入っていった。
「あーあ、また買っちまった。からあげサンも買っちまった」
神立は紙カップに入った唐揚げを爪楊枝で食べながら傘越しの空にぼやいた。
「レジ前にあると急に食べたくなるよね」
「そうなのよ。全然買う予定なかったんだけど、一目見た瞬間に今まで食べたからあげサンの味とか香りとか口に入れた瞬間の満たされた気持ちとかが全部フラッシュバックしてきて買わざるを得なかったんだよ」
もうこれ麻薬みたいなもんでしょ、と彼女は二個目を一口で食べて「うまあ」と幸せそうにする。
「にしても雨の日は歩きにくくてやだねえ。この辺の道路ぼこぼこしてるから水溜りも多いし」
「長靴でもあれば違うんだろうけどね」
「確かに。長靴は最強だったなあ。そういえば子供の頃は、雨そんなに嫌いじゃなかったかも」
彼女は水溜りを跳び越えて笑った。
「じゃ、またいつか」
十字路の真ん中で僕たちは別れ。
そして、またすぐに早すぎる再会を果たすことになる。
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