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でも、そんな生活の中でもふとお姉ちゃんの影を追ってしまう自分がいる。
心の片隅に潜む、何年越しかの黒い怪物。
上から押さえ込もうとしても、その倍の力で僕の陣地を強引に奪う。
夜、一人の時にたまに顔を出しては僕に問いかける。
『お前はなにがしたいんだ?俺は何をすればいいんだ?』
僕はなにがしたいんだろう。
お姉ちゃんと喋りたいのか、お姉ちゃんに生き返ってほしいのか、相手の運転手を殺したいのか。
ねぇお姉ちゃん、僕は一体どうすればいいんだっけ?
やがて痺れを切らした怪物は、僕を頭から飲み込んだ。
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ある夜、僕はお姉ちゃんの形見を手に取っていた。
ワンルームの部屋に秒針の音だけが響く午前二時。
手に持ったピンク色の手鏡は、持ち手の部分が少し欠けている。
年季が入ったその鏡は昔お姉ちゃんが愛用していた手鏡で、実家から持ってきたお姉ちゃんの形見。
磨き忘れたことは一度もない、その手鏡が、さっきからちょっと変だった。
「んー?」
カタカタ、カタカタ震える手鏡。
鏡を良く見ようと顔を近づけた瞬間、聞こえるはずもない懐かしい声がした。
「あーー!?」
「う、うわっ!」
突然、鏡の向こうに自分ではない顔が映った。中学生くらいの女の子。忘れるはずもないその顔を、僕はじっくり見てから呟いた。
「お、お姉ちゃん……?」
「やっぱり雄大君だよね!?うわー、えー、大きくなったねぇ」
お姉ちゃんが鏡の中で生き返った。
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