冥界の門が開く日

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 何処かの教会の鐘が鳴る。  零時を告げるのは、Halloween始まりの合図。  紫の煙が立ち上り、地面が酷く歪む。地面は隆起しているが、墓石は倒れていない。真っ黒の地面だけが波打ち、蠢いている。ケーキの生地を泡立て器で混ぜ合わせるように不気味な線がぐるぐるり。  おぞましいほどに大気が震え、本来交わされることのない生と死の狭間に死の音が鳴り響く。  この現状を視界にいれてしまった瞬間、目を潰し、耳を塞いでも指の隙間から入り込む音で鼓膜を破り、髪を掻き毟り肉ごと皮膚を抉る。只の人間ならば、そんな発狂者と成り果てるのだろう。  だけど、ボクならば心配無用だ。  なぜなら、ボクは「只の人間」ではない。  人間ですらない。  冥界の者と共に過ごすことが許された唯一のコウモリなのだ。
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