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紫の煙が段々薄まると、そこには様々な影が身を寄せ合っていた。振動が収まり、冥界からの来訪者たちが現世で埋葬された自分の体を借りてやってきたのだ。そんなゾンビの集団がゾロゾロと自分の思いおもいの方向へ足を向ける。
いけない、あの子を探さなくちゃ。
焦燥感に駆られたまま、翼を動かした。
彫りの深い顔立ちの人が多い中、アジア系の顔もチラホラと見かけた。
彼らの半分くらいの背丈の女の子。
そして、視界の端に黄色が見えた。
忘れられた向日葵の置物みたいな、埃を被ってくすんだ黄色。
見間違うはずがない。
「エリー!」
風を切って、ボクは彼女の元へ飛んでいく。
両耳のすぐ横で揺れる束ねられたその髪型は、双子の馬の尾のようで。
白いエプロンドレスを身にまとうその娘はボクの声に気付いたようだ。
ボクを見つめ、華やぐ笑顔に向けて一直線に進む。
目の前に来たボクは彼女を見つめた。
「ネ、ネ、ネ、ネ、ネ!
デート行こうヨ! ボクネ、ずっとネ、この日を楽しみにしてたの!」
彼女は「モチロン」と、可愛い笑顔で快諾した。
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