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アフタヌーンティー
エリーとは、色んな場所をめぐった。
廃墟も、花畑も、とにかくいろんな場所をだ。
何処へ連れて行っても彼女は楽しいと笑ってくれる。でも、あまり歩き回ると疲れてしまうはずだ。
少し、遠くの電光板に目を向ける。
時計は午前三時少し前。
意外にもプラン通りに添えているのではないか。
さて、軽食をとるには丁度良い。
散々歩いて走り回って巡り回ったのでアフタヌーンティーを嗜みたい時間だ。
本来の意味とは違う気がするけど、この際どうだっていいのだ。
先導するお嬢様が楽しんでくれること。ボクにとっては一年の間で一日しかできない接待なのだから。
シャッターの下りた商店街の道を通り抜ける。目指すは、ボクが以前見つけた二十四時間営業と掲げていた店だ。
「エリーにね、飲んデほしいものがアルの!大きなカエルの卵ミタイな飲み物!」
「どのくらい大きいの?」
「ボクの顔くらい!」
「あら、小さいじゃない」
鈴の鳴るような軽やかな声でしれっと失礼なことを言われた気がする。
「ボクにとっては大きいノ!」
憤慨すると、フフっと喉を鳴らした。
「私が人間だった時、お友達は皆んなカエル苦手だったけど、今の女の子はカエルが好きなのかしら」
「泥水のママ、飲んでるクライだもん!キットそうなんだよ!」
「それは不衛生ね。最近の人間は泥水ですら胃痛を起こさなくなってきたのかしら」
ううん、と小首を傾げるエリーは考え事をしているようだ。
「時々チョット、変な色してる時もアルよ!白とか、青とか、ピンクとか」
ボクの知っている情報を伝えた時、少し離れたところから物音がした。その直後に若い男性の声が聞こえた。
「おーい、そこで駄弁ってる冥界からのお客さん一人と……コウモリ一匹? 店に入る気ないなら他所行ってくれないかい」
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