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ぼくは、もの音ひとつたてないように細心の注意をはらいながら、くらやみのなか目を慣らしていって、いろいろなものが見えてきたころに、そうっとまどを開けたんだ。
ああ、いけない。地面に足をつこうとして、ぼくはわすれものをしたことに気づく。さすがにはだしのまんまでは、逃げ切ることはむずかしいだろ。
くつをとったぼくの目は、鏡にうつった置き時計の蛍光色に光る針を見つめていた。
まだ、9時か。少し予定より早いけれど、この時間に抜け出せば、夜明けまでに間に合うだろ。
くつをはいたぼくの足は、ようやっと地面をふみしめて、街灯もまばらなくらやみの道を、月を目指しながら進みはじめる。
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