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もう遅い
あの、お姉さん、ぼくね、これからお父さんお母さんに会いに行くんだった。急がなきゃ。ありがとう。バイバイ。
始発のシャトルは、もうすぐ出るころかも。そう思ってぼくは、店員のお姉さんに別れのあいさつをし、すぐに出発しようとした。けれども、もう遅かったようだ。何もかも。
あー、こんなところにいたのか。3号。早く施設に戻るんだ。
白ずくめの衣装に身をつつんだ者たちが、ぼくを連れ戻すためにやってきた。
ああ、しまった。警備のアラームが再起動する時間も、4時くらいだったか。
ぼくはただ、家族みんなで、父の日をお祝いしたかっただけなのに。
泣きながらぼくはそう叫んだのだけれど、いくら情に訴えかけようが、白ずくめのロボットたちに向けて叫んだところで、なんの変化もなかった。
ただ、その場には心を動かされるものがぼく以外にもいたのだ。女性の店員さんは、すばやくぼくの手をひっぱって、路地裏をくぐり抜け、あっという間にロボットたちを巻いてしまったのだった。
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