今の話

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今の話

「嘘」 今回の勤務を終えて帰宅し、鞄の中身を整理していたらこれが出てきた。今子どもの間で流行っているキャラクターが描かれた便箋に、ほんのりフルーツの香りがまだ残っているカラーペンで書かれた文字のそれ。文章も昔と全く同じのそれが、今になって再び私の元に届けられた。ただ違うのは、文字が漢字に変わり、まだ紙も筆跡も新しいことだ。つまり、私が勤務中に何者かが自分の鞄に入れたのは間違いない。一体何者だろうか…ロッカーは鍵が掛けてあり簡単には開けられないはずなので、あるとしたら少しの間トイレに置き忘れたときだが…。でも、仮に自分の同僚がこれの差出人だったとして、そこまでするだろうか。考えれば考えるほど、混乱していくばかりだ。 ふと、時計を見上げる。…色々まだ腑に落ちてないことはあるけれど、また仕事に向けての準備を優先しなければならない。それに、まだこれからやりたいことだってある。気になるのは事実だけど、今は目の前のことに集中しなくては。 …結局このときは、やるべきこととやりたいことをこなしていくうちに、謎の手紙のことをすっかり忘れてしまっていた。
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