犯人はお前だ(?)

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犯人はお前だ(?)

磨りガラスの窓の外は、紺を塗りつぶしたように暗く何も見えない。ロッカールーム内は、いつかの昼間の小学校より、蛍光灯の無機質な白い明かりがより際立っている。制服から私服に着替えると、今週の勤務からの解放をより深く感じとるために深呼吸をした。さあ、あとは愛しの我が家へまっしぐらだ。鞄を肩に掛け、意気揚々とまだ暗い廊下へ出た。腕時計を見ると、現在の時刻は午前2時45分。今回はちょっと、鍵を忘れたり、手持ちのライトがいきなり故障したり、教室の花瓶が突然割れてしまったり、色々あってこんな時間になってしまった。これは間違いなく、家に着いたら3時を過ぎるな…。ん?3時? 「3時って…」 ふと、このときあの手紙のことを思い出した。そして、私はある考えが浮かんだ途端、いそいそと出入口とは別の方角へ歩き出した。 目的地はもう目前というところで、心なしか忍び足になる。戸の上の札の文字を確認した。…理科室だ。少し戸の窓を見ると、微かに橙色の明かりが見える。間違いない、誰かいる!先程の巡回時は、誰もいなかったのに…。腕時計を確認すると、午前2時55分だった。 「まさか…ね。」 好奇心のままここに来てしまったけれど、いざ目の前にすると怖くて堪らなかった。できたら、あの手紙とは関係ないただの不審者であればいいのにと思った。そしたら、余計なことは考えずにただ捕縛できるから。でも…もし…。 いや、やっぱりここは入るべきだ。だって、いくらあの手紙の主でも侵入者は侵入者。それに、今の私は小学生ではなく、警備員で社会人だ。だから私情は挟まず、しょっぴいてやるのが義務。それに、本当に私を好いていたとしても相手が不審者なんて願い下げだ!今、その面暴いてやるから覚悟しろ!意を決して、だが相手を刺激しないように理科室の戸を引いた。…が、動くな!手を上げろ!みたいな啖呵を私は結局切れなかった。
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