ルークとの再会

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ルークとの再会

「いいですかハルさん、何かあったら真っ先に私の名前を叫んでください。そうしたらすぐに駆けつけますので!」  ミルは私にそう言い聞かせると、私の背中を押した。  私は息を呑む。  シュトラールの西側には私達が通ってきた森とはまた別の比較的小さな森がある。  今回私が選んだクエストはそのニーチェの森で「森の涙」という宝石を探せというものだった。  しかもこのクエストはミルなしでクリアするように、というのがミルからのミッション。  ちょっと不安だけれど、私だって炎魔法と光魔法は覚えたわけだし無力じゃない。  そう、これは私の憧れていた冒険なんだ! 「お、おい。嬢ちゃん一人に行かせるつもりか?」 「えぇ。心配ですが、師匠として鬼にならねばなりませんの。この子には強くなってもらわないと」  心配そうに私を見るのは衛視のハザックさんだ。                         そう、彼は私がシュトラールに入国する時にびっくりしていたおじさん。  シュトラール王国の門の下までミルは私を見送ってくれたというわけ。 「クゥーン……」 「よしよし。心配してくれてありがとねクーシーさん」  私はふわふわの白い毛を撫でるとクーシーさんは尻尾を振った。  よし、行かなきゃ。 「ハルさん、私はさっきのギルドで待っています。色々と情報の宝庫ですからね、あそこは」 「うん。分かった。じゃあ、行ってくるね!」 「き、きぃつけるんだぞ! すぐ逃げろよ!」  私は肩に鞄を提げながら、ミルに作ってもらった新しい服を着てクエストに向かう。  足が軽い。早く森に行きたいと叫んでいる。  逸る気持ちを必死に落ち着かせながら、私はニーチェの森に入った。  一日一回決まった時間に鳴くというタイムバードの鳴き声を聞きながら、一時間ほど森の中を歩く。  魔物は何故か見当たらなかった。  森の涙はどこにもない。まぁ、こんなに早く見つかるわけないんだけど……。  森の涙、ね。一体どこにあるんだろう。  依頼書には森の涙を手に入れろしか書いていないし……。 「そんな闇雲に探しても見つかるわけないっしょ」 「っ!!」  私は何者かに依頼書を奪われた。  速い! しかも全然気配感じなかった!  すぐに振り向けば、いたのは先日助けてくれたルーク(どうやら仮名らしい? まぁ呼べればなんでもいいけど)だった。   「ルーク! だっけ? どうしてここに?」 「んー? 暇つぶしってやつかな。アンタといると面白そうだし?」  揶揄うように私を見つめるルークに私は眉を顰める。   「おいおい、なんだよその顔。こんな伊達男に見つめられて照れるところじゃねぇの?」 「お生憎、自信満々な男の人はちょっと苦手なんです」  頭の中で某幼馴染の顔が思い浮かんだ。  それと一緒にエリザとレンヤのキスも連想されて──。  う、気持ち悪い……。私は頭を乱暴に掻き毟る。 「ちぇっ。まぁいいけど。俺、アンタに興味あるんだよね。アンタさ、無職なのにどうして無理してクエスト受けたの?」 「さてはさっきのギルドにいたのね? ……それは夢の為だよ」 「夢?」  私は草を掻き分けて森の涙を探しながら答える。 「うん! 私の夢は世界中を旅することなの!」 「!!!」  ──その時、ルークの目がこれでもかというほど見開いた。 「でもその為にはある事を成し遂げなきゃいけない。だから強くなる」 「なんだよ、そのある事って」 「絶対笑うもん言わないよ」 「笑わないって」  私はため息を溢す。  まあ、私が聖女であることを話さなきゃいいだろう。 「……私、魔王を倒さないといけないの」 「!!? ま、魔王って、あの魔王か?」 「そ。あの骸骨頭の化け物」  その瞬間、ルークは地面を転げまわって笑い出す。  笑わないって言ったくせに……。ルークを居間にも殴りそうになる拳をなんとか理性で止めた。  ったく、こっちは笑いごとじゃないんだから! 「じゃないと死ぬの、私。そういう呪いにかかったから」 「はぁ? 魔王を倒さないと死ぬ呪い? 冗談だろ?」 「冗談ならよかったけど」  ルークは私の顔を見て、嘘じゃないことに気づいたようだ。  土で汚れた箇所を叩き、なんとも複雑そうな顔をした。  意外にコロコロ表情変わるんだなこの人。 「……悪かったな、笑ってよ」 「! ううん。別に。笑われるのには慣れてるから気にしないで」  するとルークの顔がさらに歪んだ。  それにしても……草むらにもないな、涙。 「ねぇルーク。それより貴方、森の涙のありか知ってそうな物言いだったよね? どこにあるの?」 「……あぁ、それなら。そろそろ向こうの方から来てくれると思うぜ?」 「?」  どこからか、獣の唸り声が聞こえる。
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